「ゲノム編集双子誕生」の報告を目にして…
2018年11月25日、中国の賀建奎・南方科技大学副教授は動画サイトで世界を驚愕させる研究成果を喧伝し始めた。
ゲノム編集技術CRISPR/Cas9を使い、体外でヒト受精卵(胚)のCCR5遺伝子をあえて“変異”させ、胎内移植したところ、双子の女児が“健康に誕生”したと主張したのだ。
その3日後、私は香港で開催された第2回国際ヒトゲノム編集サミットで彼の報告を目の当たりにし、大きな衝撃を受けた。

この主張は、現在、論文投稿中で真偽のほどは分からない。事実なら、少なくとも中国の生殖医療指針に違反したことになる。
また臨床研究の審査・承認(審査した病院は関与を否定)、実施体制、資金面なども不明点が多かった。また、双子は“今後も健康”とは限らない。
このため賀副教授を厳しく批判する報道は実に多い。一部は罰則条項がない指針で規制してきた中国政府を問題視した。

本件について別の観点から考えたい。この一種の生殖医療に同意した夫婦の視点だ。なぜなら、11月26日、私は動画を見た別の男性から夫婦でゲノム編集を使う生殖医療の臨床研究に参加したいとメールで相談を受けたからだ。
賀副教授の臨床研究の同意説明書によれば、出生前のエイズワクチン開発とあり、いわゆるデザイナーベビーのような目的ではない。
動画でマークと紹介された夫はエイズ患者で、妻グレースと相談し、洗浄した彼の精子を顕微受精する際、わが子が先々遭遇しうるHIV感染に対する抵抗性をもつように、CCR5遺伝子を変異させるCRISPR/Cas9を注入する “遺伝子手術”に同意したという。
先天的にCCR5変異をもち、HIV感染抵抗性をもつ人は欧米に実在する。そしてルルとナナは健康に生まれた(真実ならば)。
私たち皆、同意して誕生していない。全て親たちが私たちの誕生を決めた。機会があれば、次は私たちが親として子をつくる。
不妊の場合、夫婦で同意書にサインすれば生殖医療を受けることができる。子の希求は幸福追求の一つであり、権利として憲法13条で保障されている。
以下、将来親になる人々の視点から、ゲノム編集を使い遺伝子改変児をつくることについて考える。