日本人がなぜか「ホーチミン」の次世代カルチャーを牽引しているワケ

世界に拡散する「日本ムーブメント」
テリー 植田 プロフィール

アジアで日本語学校を運営するのは不動産会社

日本のアジア人向け日本語学校運営を行っている多くの企業が、学校法人ではなく、不動産会社であることはあまり知られていないと思います。マンションの空き部屋を有効活用するために教室にし、住居としても貸し出しています。

 

LAMHAグループの藤田宏治CEOも、絶妙なタイミングでホーチミンでのこの流れに乗ったといえるのではないでしょうか。はたして、不動産業から日本語学校へのシフトはうまくいったのでしょうか?

●藤田氏談
実は、この不動産事業を進めている間に、日本の大手不動産グループのホテル経営会社より人材についての相談があったのです。まったくの畑違いでしたが、私がベトナムに来ている流れでの相談でした。

初めての人材関連の話でしたが、これも何かの縁と感じ、苦労を顧みず二つ返事で承諾することに。人材関連の仕事もしたことがなく、当然、知識もなし。受けたからには、やらねば! そう考えて、まずは、日本語が話せる人材で日本で働きたい人を集める作業に着手しました。

ありとあらゆる方法を探り、実行しました。インターネット、SNSなども当然使いました。しかし、それだけでは継続的な業務にするには難しいと考えました。日系の人材関連会社が山ほど進出してきている中で、同じようなことをしていても勝ち目はありません。だったら、人材を育成するしかない。

下品な表現かもしれませんが、「仲卸や販売業」から「製造業」へ転換したスーパーマーケットのような発想です。

私の20年以上の会社経営経験で感じたことは、やはり人材の難しさ。「選ぶ」ことも当然必要なことですが、「働く」と「学ぶ」を連動させることこそが、これから主流になっていくのではないか、と考えました。話題になった「近大マグロ」や、2018年に開校した新潟食料農業大学のような考え方です。

また、学生たちを見ていると、いろいろなことが透けて見えてきました。なんといっても「勉強が好き」。「勉強してスキルを上げなければ、収入が上がらない」──この考え方がとても強いのです。

彼らは勉強の場を求めていました。しかし、「少人数、日本人教師、低価格」これに応えられる学校が少ないことも事実です。

私の仕事はオフィスやアパートの経営。だったら、空いている場所を教育の場にすればいいんじゃないか! 空いているスペースを教室に変えれば、最短で環境が作れる! そう考え、即、教室を開校しました。

難しいことを教える能力はないが、「日本語」「ビジネススキル」についてはなんとかできるだろう、足りないところは勉強するしかないと決断し、「やる気学校」の設立となったのです。2017年春のことでした。

現在まで教えてきた学生は、300人を超えました。「少子高齢化」から「無子高齢化」といわれている昨今。日本の文化を学び、日本が好きな外国人が日本で働くこと。このことを前向きに捉え、できることを精一杯やる。私の人生後半の使命と理解しています。

学ぶ意欲の高いベトナムの人々 写真提供:藤田宏治

日本とベトナムのクロスオーバー

藤田氏が経営する日本語学校の初級コースの授業料は、学習時間350時間で約4万円。日本語能力のレベルと、日本に行くことが決まっているかどうかによりコースが分かれます。教材と問題集も活用していく。

ホーチミンの日本語学習者は、日本で就業を希望する者と、ベトナムで通訳翻訳者となることを希望する学生が大半を占めています。日本語学校を開校して3年。リゾートホテルで働く卒業生が多いようです。今後は、「日本語が話せるベトナム人」からスキルアップした「仕事ができるベトナム人」の育成がミッションだと藤田氏は語ります。

ホーチミンの「教育」と「アミューズメント」分野の最前線で、2人のような日本人のキーパーソンが今まさに「カルチャーの種」を蒔いています。5年後、10年後は思いもよらない日本とベトナムのクロスオーバーなカルチャーが生まれているかもしれません。