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この一年で、世界はこんなにも「戦争が起きやすい状況」になっていた

欧州極右とバノン、ロシアの傭兵も…

今年(2018年)の漢字は「災」なのだそうだ。安倍総理にふりかかったモリカケ問題なども入るのだろうが、天災、人災、今年の世界は相入り乱れ、底が抜けたかの様相を呈している。

米中、低迷のカルテ

筆頭は米国のトランプ大統領。実際にやったことは、その言葉ほどひどくはないのだが、ドタンバタン、中西部の失業白人層への受けばかり狙った言動で、戦後の世界秩序をかきまわす。そしてそうこうするうち、顧問弁護士にも裏切られ、数々の不正、不法行為、そして嘘が明らかになって弾劾の声も出始めた。

彼の始めた中で一番大きな事業は中国叩き。新冷戦と言われる程、中国を敵視して、ファーウェイの女性副会長をカナダで逮捕させたり、中国5社の製品使用をグローバルに禁止したり(使用した製品を米国政府機関が調達することを禁じた)、もはやなりふり構わない。

そして叩かれる一方の中国は、じっと鳴りを潜めて風林火山。よほど自信があるのだろう、毛沢東が昔やったように、敵が優勢の時にはじっと雌伏して好機を待っているのだろう、と思うと、それほどでもないようで、これまで何でも自分の思う通りに動かせた共産党の優等生官僚達が途方に暮れている風情が伝わってくる。

これまで経済成長のシード・マネーを貿易黒字と外国からの直接投資にあおいできた中国としては(2016年は貿易黒字だけで5100億ドルに達し、これだけで経済成長分の大半、GDPの4.5%分に達するのだ)、この両方が激減しかねない現在の情勢は、中国を負のスパイラルに突き落としかねない危険なものなのだ。

今、中国では、有力民営企業は国営企業の傘下に避難し、中小企業では倒産が相次いでいる。鳴り物入りで開業したアジア・インフラ投資銀行AIIBも、債券を発行して資金を調達することもなく、新規案件の発表はぱたりと止まっている。

さりとて、習近平政権がトランプに譲り過ぎると、国内の長老や軍などからきつい反発を受ける。新規雇用が減る中、毎年800万も輩出される大卒の青年は行き場を失い、そのうち1989年の天安門事件、あるいは今のパリでのような騒擾事件を起こすかもしれない。

逆に朝鮮半島情勢は、低位安定の様相だ。米国がこれ以上の譲歩を避けているのが、その主因で、それは日本にとっては歓迎するべきことだ。米国にとっては、北朝鮮のICBM(米国に到達し得る)の脅威を除いておきさえすれば、後は余裕をもって対応できるということで、終戦宣言や平和条約締結の話しは動かそうとしない。

北朝鮮もそろそろ焦れて、再び核施設を増設するなど、以前の「核による恐喝」の手法に戻る気配を見せている。

インドでは、来年総選挙なのに、モディ政権が勢いを失っている。しかしこれは、地域を不安定にするものではない。

 

火薬庫が帰ってきた

これに比べて、中東では動意が高まっている。イラン、サウジ・アラビア、そしてトルコの3強が織りなす古代以来の争いに、米国やイスラエルやロシアが関わる構図なのだが、前者3強の足元は液状化しつつある。

サウジのサルマン皇太子が国際的な反発を食らって、王家内部の継承闘争に火がつくかもしれない。サウジが不安定化すると、中東地域全体の力のバランスは大きく揺れることだろう。

イスラエルのネタニヤフ首相の地位が揺らいでいることが、同国のパレスチナ政策をますます非妥協的方向に追いやり、地域の不安定化の火に油を注ぐことになるかもしれない。

イランの最高指導者ハメネイも今年は80歳となり、後継問題が浮上すると、イラン内部の微妙なバランスを乱すことになるだろう。

「世も末だ」という最近の感慨を強めるものは、17世紀以来、世界文明の先頭を切ってきたヨーロッパの混迷だ。

中東やアフリカ移民の急増で、人種的・文化的なアイデンティティーを侵食されていること、そして中国に雇用が流出していることが基本にあるのだが、英国のBREXIT騒ぎ、フランスのマクロン大統領の改革政策に反対する暴動と改革の後退、ドイツでの極右・反移民勢力の台頭、そしてイタリア新政権の財政赤字垂れ流しのポピュリスト政策等々と、EU、そして欧州各国の内部は今や四分五裂の状況だ。