元経済ヤクザが読み解く「中国を落としたアメリカが狙う次の標的」

世界が再編されつつあるなかで
猫組長(菅原潮) プロフィール

新たな枢軸国

ファーウェイ製品の使用継続を表明しながら、12月15日にようやく見直したのが、ドイツとフランスだ。そのドイツこそが、いまの中国と最も親密な関係を築いてきた国である。両社の蜜月ぶりを振り返ろう。

中国の首相、李克強氏(63)は今年6月に訪独し、ドイツの首相、メルケル氏(64)と満面の笑顔で握手をした。両首相はドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンと、中国の自動車メーカー、江淮汽車との間で、電気自動車を合弁生産する契約の調印式に出席。ダイムラーは、北京汽車への出資を決め、メルケル氏が「中国はより重要かつ戦略的なパートナーになった」と褒めそやした。

翌7月には再び李克強氏がドイツを訪れ、メルケル氏と会談。製造系複合企業のシーメンス、フォルクスワーゲン、総合化学メーカーのBASFが中国と2兆5600億円規模の取引合意をする。

Photo by GettyImages

金融面では、中国の中央銀行にあたる中国人民銀行とドイツの銀行が、中国内でドイツの企業や団体が人民元建て債券を発行できるように合意したのだから、もはや中独間は事実上のFTAを締結したと言えるだろう。

 

元々「中国製造2025」は、2011年にドイツが国家プロジェクトとして、製造業のデジタル化を目指して掲げた「インダストリー4.0」の中国版だ。その「インダストリー4.0」には、自動車とネットを常時接続する「コネクテッドカー」の分野で、アウディ、フォルクスワーゲンとの提携企業としてファーウェイを指名している。一連の独中の関係を見れば、何らかの形でドイツとファーウェイの関係は続くと考えるべきだろう。

そのドイツはここ最近、フランスと急接近している。『元経済ヤクザが読み解く「日産事件と欧州覇権争いの深い関係」』で書いたように、フランスの首相、マクロン氏(40)が支持する「ユーロ圏の共通予算」「EMF(欧州通貨基金)」に、難色を示していたメルケル氏が同調した。アメリカに対抗する「一つのヨーロッパ大国」の実現を、仏独揃って目指す流れだ。

だがアメリカはすでにドイツに攻撃を仕掛けていると私はみている。狙ったのは「ドイツの爆弾」と言われている破たん直前のドイツ銀行だ。マネーロンダリング容疑での家宅捜索が、まるでフランスに当てこするかのように、日産事件直後の11月29日に入っている。

捜査の主体はドイツ当局。だが、このパターンは黒い経済人たちがマネーロンダリングの拠点として利用していた、香港のHSBCの凋落に酷似している。9・11同時多発テロ事件以降、世界中の金の動きの監視を強化していたアメリカは、「これ以上(テロリスト組織の)ロンダリングを続けるならドルを引き上げる」とHSBCをどう喝した。結果、HSBCは外貨の引き受けを断り、クリーンな海外送金さえできないまでに落ちぶれた。

破たんすればヨーロッパは元よりドイツも火だるまという火薬庫に、自ら捜査のメスを入れるには相当の理由がなければできないだろう。国際基軸通貨である「ドル」こそ、アメリカの虎の子。HSBC同様、「ドルの停止をカードにした要請」こそが「相当な理由」としか、私には思えない。

中国=ドイツ=フランスによる新たな枢軸国と、アメリカを中心とした新たな連合国。世界は分断ではなく、「乱」の中で再編に向かっているのだ。