元経済ヤクザが読み解く「中国を落としたアメリカが狙う次の標的」

世界が再編されつつあるなかで
猫組長(菅原潮) プロフィール

通信速度という名の戦略物資

現在までのところ、ファーウェイの通信機器が、スパイや中国共産党の思惑にしたがって突発的に停止するという決定的な証拠は示されていない。そもそもファーウェイが、安全保障のリスクになるかならないかを、アメリカは実は本質的な問題にしてないのではないかと、私は考えている。その根拠も「対称性」にある。

多くの日本人にとってファーウェイはスマートフォンのメーカーだ。だが、世界市場でのスマートフォンのシェア率は、サムスンの19.3%に次ぐ13.3%の世界2位(2018年4~6月期)。対して、ファーウェイの通信基地局のシェア27.9%(17年)で、2位のエリクソン26.6%に勝っている。

17年のファーウェイの研究開発費は約1兆3000億円で、売り上げの実に約15%を投下している。ファーウェイ自体は上場していないものの、世界の上場企業と比べてもその開発費は第7位だ。さらに国際特許出願率15年1位、16年2位(1位はZET)、17年が1位。日本で初任給40万円の募集が話題になったように、給料も高い。

つまり、ファーウェイは、アメリカのトップIT企業と対称の存在となったのだ。

 

しかし、ここに落とし穴があった。

対称となったならばアメリカには攻撃するノウハウがある。1970年~90年の日米貿易摩擦では特許や、共産圏への禁輸違反などありとあらゆる手段が日本企業に講じられた。同じ構図が「情報漏えい疑惑」だと私は疑っているのだ。

同時に登場したのが、次世代通信技術5Gの普及。10Gbps以上の速度など、現在の広く普及している有線を凌駕する性能だ。

「情報速度」は国家にとって、石油や穀物などと同じ戦略物資の一つである。15世紀半ばからの大航海時代には、移動速度を求めて流体力学が国家プロジェクトとして研究された。

人や馬車よりも、早く移動できる鉄道の発展はより広範な情報の入手を可能にさせ、国家を繁栄させる原動力となった。第一次世界大戦では軍用機が導入され、攻撃と同時に最前線の状況を把握する手助けにもなった。

現在では、情報そのものが破壊力をもっている。その好例の一つが、少し前に問題になった証券取引におけるフラッシュオーダーだ。これは限られた人にだけ0.03秒ほど早く情報を開示する仕組みで、このわずかな時間に高性能なコンピューターがオーダーを行い、巨大投資銀行などは易々と巨万の富を築いたのだ。わずか「0.03秒」先の未来を入手することが、すさまじい破壊力を持っている。

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事実アメリカの思惑通り、イギリス、日本、オーストラリアなど「新たな連合国」が、アメリカに追従して早々にファーウェイ製品を市場から追い出した。今後は、5Gへの切り替えと共に同盟国製の基地局を設置すれば、アメリカは通信速度という戦略物資を手中に収めることもできるだろう。