空母に改修される見通しの護衛艦「いずも」(海上自衛隊ホームページより)

「いずも空母化」は自衛隊の要望ではなく実は「自民党主導」だった

ついに「政治主導」の防衛政策が前面へ

12月18日に閣議決定され、来年度改定される日本防衛の指針「防衛計画の大綱(大綱)」に盛り込まれた「空母保有」が、自衛隊の要望ではなく、自民党案をそっくり取り込んだ「政治主導」の防衛政策だったことが筆者の取材でわかった。

今回、警戒感を示す公明党を押し切り、自民党案が丸ごと大綱に反映されたのは、安倍晋三政権下で「国家安全保障会議」が新設されたことが大きい。大綱原案の策定者が防衛省から国家安全保障会議に移り、主役が防衛官僚・自衛隊制服組から「首相官邸」に代わって、政治主導が前面に出てきたのだ。

空母保有は、海上自衛隊にとって創設以来の夢とはいえ、近年の海上自衛隊は慢性的な予算不足に悩み、護衛艦「いずも」型の空母化に巨額の予算を回す余力はなかった。政治主導で決まった突然の空母保有に、自衛隊は戸惑っているのが実情だ。改修したはいいが、「空母としての使い方はこれから考える」という本末転倒の事態となりかねない。

 

自民党国防部会の有力議員による証言

「防衛計画の大綱」は、概ね10年間の日本の安全保障政策を規定するが、現大綱は2014年度から適用されたものなので、半分の5年間しか持たなかったことになる。

今回、大綱を改定するのは、安倍政権下において制定された、集団的自衛権の行使や戦闘地域での米軍支援などを可能にした安全保障関連法を、大綱に反映させる必要があるためだ。

昨年12月に導入を閣議決定したミサイル防衛システム「イージス・アショア」の装備化、F35戦闘機の追加購入なども次期大綱に明記され、米国製武器の大量購入にお墨付きを与えた。軍事的および経済的な対米支援が打ち出され、その意味ではトランプ米大統領の意向に沿った内容となっている。

中でも、次期大綱の一番の目玉は「空母保有」だろう。

これまで政府は「憲法上、他国に脅威を与えるような攻撃的兵器の保有は許されない」とし、その例として「大陸間弾道弾(ミサイル)、長距離爆撃機、攻撃型空母」を挙げ、これらの保有を禁じてきた。

だが、次期大綱では「短距離離陸・垂直着陸(STOVL)機を含む戦闘機体系の構築」としてF35B戦闘機の導入を打ち出し、「現有の艦艇からのSTOVL機の運用を可能とするよう、必要な措置を講ずる」として、護衛艦「いずも」型の空母化に踏み切った。

現在、「いずも」が搭載するヘリコプターを戦闘機に積み替えれば、「いずも」はたちまち「攻撃型空母」に変身することになる。

ヘリコプターを搭載した「いずも」(海上自衛隊ホームページより)

「攻撃型空母」について、岩屋毅防衛相は記者会見で「攻撃に要するさまざまな種類の航空機を常時載せた形で運用される。他国の壊滅的な破壊を可能とするような能力を持ったもの」と説明。さらに「他に母基地がある航空機を時々の任務に応じて搭載するというのは、決して『攻撃型空母』には当たらない」と述べた。

だが、ちょっと待ってほしい。横須賀基地の米空母「ロナルド・レーガン」の戦闘機や電子戦機は、ふだん山口県の岩国基地に置かれ、年2回程度の出航時にのみ空母に搭載される。すると、「ロナルド・レーガン」は「攻撃型空母」ではないのだろうか。

政府部内では「いずも」の空母化をめぐり、「中国が軍事力強化を進める中、沖縄本島より南の離島に自衛隊の航空基地がない。この空白を埋めるため」との理由づけや、「災害派遣に有効」といった耳を疑うような説明がされている。

こうして様々な使い方があることを強調すればするほど、使い方ひとつで「いずも」が「攻撃型空母」になり得ることを証明しているようにみえてくる。

自民党国防部会の有力議員に話を聞いた。空母保有の「言い出しっぺは誰か」との筆者の問いに、この議員は自民党内のある政治家の名を挙げた。

匿名が条件のため、この政治家名を明らかにすることはできないが、この議員は「自民党国防部会で5月にまとめた大綱提言に『空母保有』を書き込んだ。その内容が、今回の大綱に取り込まれて閣議決定された」とも明かし、空母保有が自民党による「政治提言」であることを強調した。海上自衛隊の要望ではなかったのだ。