マクロン大統領の炎上が「ユーロ分裂」の呼び水になる可能性

日本にとっても対岸の火事ではない
安達 誠司 プロフィール

フランス経済の実状

ユーロ参加国の中で、フランスは成長率や失業率など、経済パフォーマンスは決して良好とはいえず、どちらかといえば周辺国といわれる南欧諸国同様の「負け組」に属してきた。

例えば、2010年に発生した「欧州債務危機」では、経常収支(対GDP比)が赤字、かつ、政府債務残高(対GDP)がマーストリヒト条約における上限値である60%を上回る国で国債価格が暴落(長期金利が暴騰)するなどの危機が発生した(図表1)が、唯一、フランスだけが危機を免れた。

直近時点で、経常収支と政府債務の状況をみると、2010年当時、債務危機に見舞われた国のうち、アイルランド、スペイン、イタリアは経常収支黒字国に転換しており、すでに当時の欧州債務危機のCriteriaから外れている。

だが、フランスは現在もなお、経常収支赤字で政府債務残高のGDP比も60%を超えている。このCriteriaだけで考えると、フランスが債務危機を起こしても不思議ではない(図表2)。

このようなフランス経済の停滞は、労働市場の硬直性がもたらしてきた可能性が高い。OECDが発表している「労働者保護の厳格性指数」によれば、直近時点において、フランスの指数はスペイン、ギリシャを上回っている(図表3)。

 

すなわち、フランスの労働市場は欧州債務危機時に「悪名」をとどろかせたギリシャよりも硬直的であることを意味している。

そして、欧州債務危機後の労働市場の硬直性の改善度と債務危機一服後(2014年以降)の実質成長率のトレンドの変化の関係をみると(図表4)と、労働市場の硬直性の改善幅(先のOECD発表の指数の低下幅で代替)が大きいほど、欧州債務危機後に経済成長トレンドが上振れているという関係がみてとれる。

そして、実は、この労働市場改革が進んでいないフランスとドイツについては、逆に欧州債務危機後に成長トレンドは下振れていたことがわかる。