「ファーウェイvs.FBI」その対立の長い長い歴史を振り返る

以前から流れていた「ある噂」

不気味な噂

携帯電話の基地局納入実績で世界一、スマホ販売台数で同2位の大手通信機器メーカー・華為技術(ファーウェイ・テクノロジー)を巡る軋轢が深刻化。米、中2大大国がそれぞれの友好国を巻き込んで新たな冷戦時代を招きかねない事態に陥っている。

直接のきっかけは、カナダ当局が今月5日、米国の要請に応じてファーウェイの孟晩舟・副会長兼CFO(最高財務責任者)を同1日に逮捕していたことが明らかになったことだ。容疑はイラン制裁に違反しながらウソの証言をした詐欺罪という。市場は衝撃を受け世界同時株安に発展、日本では米中貿易戦争の緩和期待に水を差すことになりかねないとの報道が相次いだ。

しかし、FBI(米連邦捜査局)や米議会、大統領府がファーウェイと中国に抱く疑念は、もっと長い歴史のある根深いものである。事態は見た目以上に深刻だ。中国もカナダ人2人を拘束するなど対決姿勢を強めており、一つ間違えば、かつて米国と旧ソ連のように、世界が米中の2陣営に分かれて新たな冷戦時代に突入してもおかしくない。

 

オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、ドイツ、フランス、日本はすでに相次いで米国に同調する構えを見せている。ロシアやアラブ諸国、中央アジア諸国、アフリカ諸国の出方次第では、世界が真っ2つになって対峙する時代に突入しかねない。

日本でもこのところ、SIMフリーの格安スマホの販売台数でトップになったことや、日本法人が月額初任給40万円という破格の報酬を売り物に人材を募集したことが話題になり、ファーウェイはそれなりに知名度をあげている。

この通信機器メーカーは、1987年に、人民解放軍の出身で、前CEO(現取締役)である任正非氏が人民解放軍時代の仲間らとともに設立した。任氏は1944年生まれ。44歳の時に通信機器の卸売販売会社としてファーウェイを立ち上げたが、取扱製品の故障があまりにも多いので、自ら製造も手掛けるようになったという。

ファーウェイは携帯電話の基地局、ルーター、スマホ、タブレットなどを主力に、すでに世界170カ国以上に進出。創業から30年余りで、全世界で18万人の従業員を抱える巨大通信機器メーカーに成長した。

これまでは業績も好調。2017年実績で、売上高10兆4366億円、純利益8205億円を稼ぎ出した。世界シェアは、携帯の基地局が第2位のエリクソン(スウェーデン)、第3位のノキア(フィンランド)を押さえてトップの座に、スマホでは3位のアップル(米国)を抜き、首位のサムスン電子(韓国)に次ぐ2位に君臨している。

急成長の秘密は、なんといっても製品価格の群を抜く安さだ。早くから博士号を持つ通信技術者を積極的に大量採用したり、米、欧、日の企業と積極的に交流・提携して技術力を蓄積してきたのも強みだ。

加えて、成長過程では、ルーターで圧倒的な競争力を誇った米シスコシステムズのアフターサービスの悪さに各国の顧客(通信事業者)が業を煮やしていたことを尻目に、不具合が起きると速やかにエンジニアがメンテナンスに駆け付ける体制を築いて顧客を次々に獲得してきた。

実際、筆者も、この会社がまだ日本では無名に近かった11年前、新聞の連載コラムで、後にソフトバンクに買収されたイー・モバイルの幹部を取材し、同社がファーウェイ製の超小型軽量基地局を採用することで、基地局そのものの購入費用を節約できるだけでなく、基地局を設置するビルの耐震工事も不要になり、格安料金でサービスの道が開けたというエピソードを紹介した経験がある。

この記事を書く前から、筆者はファーウェイの不気味な噂を聞かされていた。「あえて、中華人民共和国の『華』の字を取り、華為技術という正式社名(中国名)を名乗っているのは、同社経営陣のナショナリズムの強さの表れであり、創業者たちの人民解放軍への忠誠の証だ」とか、「中国共産党から多額の資金援助を受けている」といった噂が絶えなかったのだ。

ある端末メーカーがファーウェイ製品のセキュリティ面を徹底的に取材してほしいと要求してきたことを、今も明確に記憶している。

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