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LINEとみずほの「ネット銀行設立」はメガバンクの変革を起こすか

もしも中途半端のままなら…
高橋 克英 プロフィール

みずほはデジタルネイティブとの接点を目指す

一方、日本の金融業界の頂点に君臨するメガバンクのみずほはなぜ、潜在的な競合相手でもあるLINEと組むのだろうか。みずほは、LINEとの協業を通じ、スマホを若いときから駆使するデジタルネイティブ世代との接点の確保を目指すためという。

確かに、若年層の既存銀行離れは著しい。いまや普通預金口座の開設件数は、メガバンク3行(みずほ、三菱UFJ、三井住友)の合計より、楽天銀行や住信SBIネット銀行などネット銀行の方が多いといわれ、「新卒社員が指定する給与振込口座は、今はほぼ100%ネット銀行」(上場会社の経理担当者)という所もある。

しかし、LINEと組んだからといって、みずほが若年層を取り込めるのかは不透明だ。彼らの思考は合理的であり、便利なら使う、安いなら使う、トレンドとして使うだけで、そこにロイヤリティーというものはない。

ましてや、現時点では、デジタルネイティブ世代の多くは、いわゆるマスリテール層で、大きな収益を生む顧客層ではない。20代、30代を捕まえても、この先数十年も優良顧客であり続け、みずほに収益を落としてくれる保証はない。

これは他のメガバンクのデジタルネイティブ世代対応にもいえる話だ。

 

実はみずほが提携に踏み切った背景には、もう一つの理由があると私は考えている。

みずほは現在、世界最大級のシステム統合に取り組んでいる。「ATMなどオンラインサービス停止のお知らせ」をTVCMや新聞広告などで目にしたことがあるはずだ。本プロジェクトは、顧客に不便を強いるうえ4000億円超の資金を投じている。それでも今回のシステム統合は、先進的な金融商品やサービスを投入するには欠かせないとの判断だ。

しかし、金融サービスやシステムにおいても、オープンイノベーションとクラウドが席巻するなか、巨額のシステム投資は、航空機優位の時代に登場した戦艦大和にもみえる。

本来なら、みずほもネット銀行やスマホ証券を自前で開発し設立する選択もあったはずだ。しかし、莫大な資金と人的資源を投じたシステム統合が重石になり、身動きがとれない。そこでLINEと組む選択をしたという側面もあったのではないだろうか。

今回の提携により、みずほはLINEに庇を貸して母屋を取られる結果になりかねない、との懸念もある。みずほ自身もそれは承知のはず。それでも「何もしないよりは、メリットの方が大きい」と判断したみずほの決断は尊重したい。メガバンク万年三位のポジションを何とかひっくり返したいとのみずほの決意が滲んでいると言えるだろう。