労働の本質を問う名著『働くということ』が時代を超えて愛される理由

コミック化の漫画家・池田邦彦氏に聞く
コミックDAYS プロフィール

働くことで見えてくるものが必ずある

──今の若者にも響くんじゃないかなというお話はありますか。

池田 どのエピソードもみんな響くはず……じゃ答えにならないですよね(笑)。でも、本当に全編通して、様々な発見があるんです。通読していくと、知らずのうちに自分の血となり肉になってくれるはずです。

私なりの感じ方にはなるのですが、乱暴に言ってしまうと、本書は「四の五の言わずにやってみなさい」ということを言われているのだと思うんです。

現代は、労働の本質がさらに見えづらくなってる時代だと思います。昔はたとえ幻想であれ大きい会社に入れれば一生幸せだ、なんて言われていたのが、終身雇用制度が形骸化した今では、頑張って勉強して大会社に就職したところでなにになるんだ、という雰囲気があります。

一方で、YouTuberやブロガーをはじめ、個人の力だけで食っていけるんじゃないかという働き方もたくさん出てきています。

時代時代で、個人の力に立脚した仕事で食べている人はいるでしょうけど、そこを目指せというのは、宝くじに当たる人はいるよというのと同じことです。今の若い方の中には、そうした仕事に目を惑わされて、時間を無駄にしてしまう部分があると思うんです。

学校でも個性的であれ、自分らしくあれと掲げられますが、何かを学び身につける前に個性と言われても、「誰の、何と比較しての個性なのか」と、困っている子供もいると思うんです。私はそんな状況をすごく可愛そうだと思うんですよ。「いいからやれ!」と言ってくれる人がいて欲しい。そんな役目を、この本は果たしてくれていると感じました。

──逆に、社会人が読んでもためになるお話はありますか。

池田 「会社員VS.職業人」というのが、この本の大きなテーマのひとつです。本書では「会社で働いている人間が自分の『職業』はなんであるかと考えた時、『サラリーマン』と自答してはならない」と書かれています。

会社員でないならなんだというと、「職業人であれ、己の仕事に誇りを持ち、会社は嫌いでも仕事は好きだと自信を持って言える人物であれ」と説いているんです。

「ひとりの人間が自己表現の場として自らの労働を捉えようとするならば、自分の労働の結果についても無関心ではいられない。労働の結果によって表現された自己が、社会によって正当に扱われることを希求している」――これは多分いろんな年齢の、むしろ会社に何年も勤めている方にとっては、ガツンと来るテーマなんじゃないかなと思いますね。

 

──まだ『働くということ』に触れていない方に向けて、何かメッセージをいただけますか。

池田 本書のスタンスと同じなんですけど、とにかくやってみなさい、ということしか言えないです。「働くことは不自由の塊である」と書いてありますが、でも働くことを経験しないと何が自由なのか、自由になったときの開放感すら得られません。

就職するのは私も嫌だったですし、学生生活の時は自由だったのが180度転換しましたが、「働くということ」を避けて通っていたら、本当に何も得られないという気はします。

コミック版は一部を料理してるだけなので、ウェブで気軽に読めるコミック版をお読みになってちょっとでも面白いと思われたら、原作をぜひ読んでいただきたいと思います。

1982年に刊行の名著『働くということ -実社会との出会い-』(講談社現代新書)

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