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米国「景気後退」が始まると…円高・株安再来の足音が聞こえてきた

1ドル90円、日経平均15000円も

日米ともに株価がやや乱高下気味の状況下、ドル円相場は1ドル=112~113円台で小動きにとどまっている。2019~2020年を展望して次の大きな為替の相場変動は円安だろうか、それとも円高だろうか。

筆者は10円幅かそれ以上の次の大きな動きは円高であり、日本株も円高に連動して下落し、日経平均で2万円割れの下げとなる公算が高いと考えている。その理由をご説明しよう。

 

円相場と株価はなぜ連動するのか

図1には日本の株価指数TOPIXと米国の株価指数S&P500、そしてTOPIXをS&P500で割った倍率(TOPIX/S&P500、以下「日米株価倍率」と呼ぶ)を、それぞれ2005年1月を100とした指数にして表示し、さらにドル円相場を重ねてある。

長期で見るとS&P500の上昇率の方が高いので日米株価倍率は下がっているが、ここでのポイントはドル円相場との関係性である。

日米株価倍率とドル円相場の関係性を見るために、それぞれの前年同月比の変化(%)を示したのが図2の散布図(期間2005年1~18年11月)である。

横軸のドル円相場が円安・ドル高に(図表右に)変化すると縦軸の日米株価倍率は上昇、つまり日本株が米国株に対して相対的に上昇するという正の相関関係があることがわかる。

ゼロから最大1.0までの値をとる正の相関係数は0.765で1に近く、関係性は高い。また図表の近似線の傾きから、ドル円相場が10%円安(円高)になると日米株価倍率は11.2%上昇(下落)することがわかる。

また日本の株価指数自体と円相場の間にも円高・株安、円安・株高の非常に高い相関関係がある。その結果、円安局面では日本株は米国株以上に上昇し、逆に円高局面では日本株は米国株以上に下落するということになる。

なぜそうした傾向が生じるのか。それは以下の3点に絞って説明できる。

第1は円安・ドル高は日本の企業利益を押し上げる効果があるからだ。その増益効果には2つある。

まず日本企業の海外現地での事業から生じる利益(外貨)の円換算額が円安で増加する。もうひとつは貿易を通じた効果だ。2000年代以降の日本の輸出企業は円安になった時に外貨(主にドル)建ての輸出価格を引き下げて輸出の量的な拡大を追求するよりも、外貨建て価格を据え置いて収益性の向上を追求する傾向が強くなった。その結果、円安による円貨換算収益の増分は企業の利益と利益率の上昇に直結する。

一方、輸入サイドでは円安による輸入価格の上昇は、ある程度は国内の販売価格に転嫁されるので利益の減少分はそれだけ抑制される。その結果、日本全体の輸出入が仮にほぼ均衡していても、差し引きで円安による企業利益の増加が生じるのだ。

円高の場合はこれが逆になる。輸出企業は外貨建ての価格を引き上げたいが、新興国の追い上げなどで競争が厳しく価格は引き上げられない場合が多い。その結果、円高による減収は輸出企業が被ることになる。

一方、輸入サイドでは輸入品の円価格が下がるが、値引きで消費者に部分的に還元されるので円高差益は企業部門から流出する。その結果、企業部門全体では利益が減少する。

日本の製造業企業の現地生産と輸出の合計である「海外売り上げ」が売上げ全体に占める比率は57.7%(2016年度JETRO調査)だから、円相場が企業利益に与える影響は甚大だ。

円高・ドル安で日本株が相対的に下落する(円安・ドル高では逆に日本株が上昇する)第2の理由は、フローの国際収支上、日本は金融収支でほぼ恒常的な純資金供給国であり、ストックの面では世界最大の対外純資産国であることに起因する。

これが大方の途上国との違いでもある。一般に途上国の金融収支は資金受入れ超過であり、対外純負債国だ。だから途上国は不況や金融危機になると、海外投資家が資金を引き揚げ、流入していた資金が流出に転じる。その際に当該国通貨売り・外貨(主にドル)買いが生じるので、通貨安になる。

ところが日本はこれと逆で、典型的な例では、90年代前半のバブル崩壊の時期に、ドル円相場は1990年の160円から80円まで円高に進んだ。

それまで対外投資(外貨買い)の主役だった生損保など機関投資家が、国内の株式と不動産価格の下落でリスク許容度を低下させ、新規の海外投資を抑制した(外貨買いの減少)。さらに彼らが海外資産のリストラも進めた結果、外貨売り・円買いが生じたからだ。

2011年の東北大震災の後も、支払保険料捻出のために日本の損保会社が対外資産の売却に動くという思惑から一段と円高が進んだ局面があった。

円高・株安の第3の理由は、投資家のリスク許容度と為替持高の変化から生じる。

米国株が大きく下落する時にはグローバルな投資家層のリスク回避姿勢が強まり、連動して日本株や他国の株も売られ下落する。この投資家層のリスク回避は多くの場合、円売り持高の巻き戻しとして円買いを誘発し、円高を引き起こす。

円高は上記の通り日本企業の利益を押し下げるので、日本株には二重に下げ圧力が加わることになる。