こだまさん(写真左)と燃え殻さん 撮影/村上庄吾

燃え殻さん×こだまさん「書くこと」が仕事になるまで

少し不運だったけど、決して不幸でない

人には必ず、語りうる物語がある。他人から見てどんなに酷く見える状況にだって、胸が震え、豊かな感情がほとばしる瞬間があるのだ――。

そうしたことを教えてくれる、二人の作品がある。

その一つが、昨年発売され、8万部超のベストセラーとなった燃え殻さんの『ボクたちはみんな大人になれなかった』。主人公の43歳独身男が振り返る、瑞々しく、そしてビターな恋愛譚。老若男女問わず多くの読者に届いた彼の初小説が、早くもこの11月に新潮文庫で文庫化され、こちらも5万部超の売り上げと好調だ。

それを記念し、先日『ここは、おしまいの地』で講談社エッセイ賞を受賞した、『夫のちんぽが入らない』著者のこだまさんとの対談を敢行。夫との性交の困難から学級崩壊に悩む教師生活まで 赤裸々につづった同書は、まさに冒頭のような作品の代表だ。こちらも講談社から文庫版が発売され、累計で23万部を超えて大きな話題となっている。

燃え殻さんとこだまさん。二人の“デビュー作文庫化記念対談”をお届けする。

 

どうしても聞きたかったこと

燃え殻こだまさんとこうやって向き合ってお話するのって、実は初めてなんですよね。

こだま私が『僕たちは~』の文庫版の紹介文を書いて、燃え殻さんが私の『夫のちんぽが~』の推薦文を書いて……と仕事上の交流はあるのに、なんだか不思議な感じですよね。確かはじめて燃え殻さんにお会いしたのも、「文学フリマ」の会場だったんじゃないかと思います。

(注:この対談は、第27回「文学フリマ」が開催された日に、同イベントの会場近くで行われた。「文学フリマ」とは全国で開かれる文学作品の展示即売会で、こだまさんのデビュー作『夫のちんぽが入らない』は、2014年にこだまさんが文学フリマに出展した同人誌に収められているエッセイが元となっている)

燃え殻ああ、そうですよね。すれ違うような感じでしたが、初めてそこでご挨拶させていただいて。

こだままさか文学フリマの会場にいらっしゃると思わなかったので、「わあ、ツイッターで有名な燃え殻さんだ!」と思って、お話するのも緊張してしまい……「こんにちは」と一言だけ挨拶をして、後ずさりしながらお別れするような感じでした(笑)。

燃え殻その後、今年の3月に神楽坂のスナックで開かれたこだまさんと(作家の)爪切男さんのトークイベントに、僕もお客さんとして参加させてもらったんですよね。開始ギリギリに到着したんですが、スナックに上がる階段の途中で、出番直前のこだまさんが覆面を着けている最中に出くわしたんです。

「お疲れ様です」とお声がけしたら、もう気持ちもオフィシャルなモードになった感じのこだまさんがそこにいて、「お疲れ様です」と……。後楽園ホールの控え室で試合を待っているマスクマンのようでした(笑)。入場テーマと共にリングインしていくこだまさんの横で、そっとついていくセコンドのようにして、僕もスナックに入っていきました。

こだま私も本当に、スナックの階段で覆面を着けているまさにその時に、「あ、燃え殻さんだ」って……(笑)。だから、その時もご挨拶だけしかできなくて。

燃え殻今日が初めて、きちんとお話させていただくんですよね。ただスナックから今日までの間にも、こだまさんの『夫のちんぽが入らない』文庫化の時に、とある“事件”があったんですよ。帯文を書かせていただいたご縁で、『夫のちんぽ~』の担当編集の高石さんが、出来たばかりの文庫版を僕に送って下さったんですが、封筒にデカデカと「ちんぽ在中」と書いてあったんです(笑)。ポストを開けたら「ちんぽ在中」って。

こだま配達の人はどう思ったんでしょうね(笑)。

燃え殻そんな「すれ違い」を経て、ようやくこだまさんに逢えました。

今日はこだまさんに、「『夫のちんぽが入らない』は小説なのか」と聞きたいな、と思って来たんです。というのも、『ボクたちはみんな大人になれなかった』が最初に単行本で出た時、あれは小説なのか、それともエッセイなのかと、すごく聞かれまして。書店さんでも、ある書店では小説のコーナーに、別の店ではサブカルチャーとかツイッターというコーナーに置かれていたんです(笑)。『夫のちんぽが入らない』は、どう言われたのかな、と。