崩壊した荒廃空き家(野澤氏撮影)

この先、「実家」をどう処するかを考えていない人へ

家も土地も売れない時代です
年末年始に実家に帰った時、少し考えてほしい。親の住む「家」を将来、どうすればよいか? 誰が相続するのか、相続したらいつ売るのか、いっそのこと取り壊すのか──判断を先送りすればするほどリスクは高まるのだ。本日、『老いた家 衰えぬ街──住まいを終活する』(講談社現代新書)を刊行した東洋大学教授の野澤千絵氏が、今すぐ、住まいを「終活」しようと訴える。

床は腐り、柱も傾いて

とある中核市の住宅地にたたずむ空き家──。

所有者の加藤福子さん(70代女性・仮名)に見せてもらう機会があった。この空き家は、20年前に他界した親が住んでいた戸建て(築50年程度)。

道路と建物の間の草木や、庭の笹の繁茂がひどい。草木は隣地にも越境しており、近隣から役所に苦情の電話が何度も寄せられている。

玄関を入ると、昭和にタイムスリップしたかのように、当時の家財道具や仏壇がそのままの状態で残され、通気のために少し開けておいたという上部の小窓から、何らかの小動物が侵入した痕跡も見られた。

一見、修繕すれば住めそうではあったが、家の内部へ入っていくと、カーペットを敷いたままの床は腐り、天井には雨漏りの形跡も見られ、柱も傾いている。解体する以外の選択肢を見出すことが難しそうだ。

この空き家は、20年前から現在まで遺産分割協議をしておらず、相続人である兄妹との共有状態になっている。登記上の名義人も故人のまま変更されていない。

もし、相続人の兄妹たちが全員、まだまだ元気だった20年前に、きちんと遺産分割協議を行い、不動産会社に仲介を依頼していれば、中古住宅として売却でき、その売却益を金銭で分配できただろう。

しかし、日々の生活に追われ放置していたため、共有者の老いも進行し、意思疎通が困難になり、処分のための話し合いをすることすら難しくなった。

加藤さん自身、自分が他界した後、子供世代に迷惑をかけたくないと悩みつつも、結局、そのまま置いておくしかなくなる可能性が高い。

 

「問題先送り」が、税負担を増大させる

日本で空き家が増えている理由は、核家族化が進行する中で、子供世代は実家を離れて自分の家を持っていることが多く、相続した実家に住むというケースが少なくなったことにある。就職や結婚などで、実家には戻らないと決めた時から、実家の空き家化は始まっているのだ。

相続が発生した時に、相続人がすぐに実家を売却するなど何らかのアクションを起こせばよいが、思い出を残しておきたい、仏壇や遺品の整理は何だか後ろめたい、先祖代々の家を自分の代で売るのは申し訳が立たない、近所の目を考えると売るのは恥ずかしい、いずれ値上がりするかもしれない……といった様々な理由で、そのまま持ち続けるケースも多い。

相続は悩みのタネ(photo by iStock)

また、誰が実家を相続するのか結論が出ない、どのように財産を分けるのか意見がまとまらず、相続人で実家等を共有にしておくことでお茶を濁す、といったケースも多い。

もちろん、この空き家問題は個人で解決すべき問題ではある。

しかし、このまま放置→さらに相続が発生→現在の共有者のそれぞれの子供世代も放置(あるいは、相続人全員が相続放棄)→所有者が多数・不明・不存在の状態で塩漬けに→地域の生活環境に著しく悪影響を及ぼす荒廃空き家化→公費解体(代執行)せざるを得なくなる、という流れが容易に想像される。

要するに、相続後に実家等をとりあえず空き家のまま置いておくという「問題先送り」は、将来世代に多大な税負担を押し付けていることに他ならないのである。

これまで国や自治体では、荒廃した空き家への対応や空き家の適正管理を所有者に促す取り組みを中心に行っている。しかし、今後、同時多発的に空き家が発生すると、現状を見る限り、市町村が適切に対応できるとは到底思えない。

だから今こそ、これ以上「問題先送り空き家」を生み出さないという「空き家発生の予防策」に力を入れるべき時期が到来しているのだ。まだ空き家の数が少ない今のうちにこそ、それに重点的に取り組むべきではないだろうか?

空き家をどう予防するか(photo by iStock)