マンション購入には面積要件も重要で、買うには最低でも30㎡以上なければいけない。電話販売などで売り込みの多い30㎡未満のワンルームには、手を出してはならない。
論拠となるデータをお見せしよう。スタイルアクトで収集した東京都港区における直近の中古マンションの売買実績である。成約事例ベースで2700件以上のサンプル数がある、信頼度の高いデータだ。
これで見ると全体の平均築年数が8.4年とかなり古いにもかかわらず、40㎡台、50㎡台では新築購入価格を上回る額で成約されていることがわかる。8年以上も住んでなお、買ったときの価格よりも高く売れているのだ。
もちろん港区という都心の話であり、都内の不動産価格が大きく上昇した期間と重なったこともあるが、8年間の家賃が浮いた上に、キャピタルゲインまで得られたわけである。50㎡台では値上がり率12%に加え、元本の減り方を年率2.6%と考えると8年で約20%となるので、この間に物件価格の32%程度の資産を創った計算だ。
ところが同じ期間の中でも、30㎡未満の物件は購入時より大きく値下がりしている。50㎡台との差は26%もあり、面積による市場の評価の違いが如実に見て取れる。
14%の値下がりといっても、港区だからこの程度で済んだので、23区でも外側となると、30㎡未満の物件は同じ期間で50%以上も下がっているケースがある。こうした実績を見れば、なぜ私が「30㎡未満はNG」と強調するのかよくわかるだろう。
なぜ30㎡未満と50㎡以上でこのような大きな差がつくのだろうか。
答は住宅ローンの面積制限にある。30㎡未満の物件は住宅ローンの対象にならないのだ。そうなると買い手は限られてしまい、市場価値は落ちてしまう。
かろうじてぎりぎり30㎡あればローンを組めるのが「フラット35」であり、それが買ってよい物件面積の下限となる。「フラット35」は例外的に小さな物件まで融資対象に含めているが、一般の金融機関の住宅ローンは50㎡以上という条件が一般的だ。
より有利な変動金利のローンが使える50㎡以上の物件のほうが買い手は増えるので中古での売却額が高くなる。それが実績にも表れている。
50㎡以上あるともう一つ良いのは、住宅ローン控除が認められることだ。50㎡未満では控除が認められないので、これも市場価値が下がる原因となる。
なお住宅ローン控除の面積要件は壁の内側で測った登記簿ベースで50㎡以上という規定なので、壁の芯から測った居住面積としては53~54㎡必要となる。その意味では「54㎡以上が望ましい」と言ったほうがいいだろう。
住宅ローン控除については業界団体が長年、「40㎡以下に下げてほしい」と陳情活動を続けており、いずれ面積要件が緩和される可能性はある。しかし現時点ではそこまで見通せないので、当面は54㎡が一つの目安となる。