最優秀男優賞は今回の菅田将暉が初めてだが、オダギリジョー、佐藤健ほか候補に挙がった「仮面ライダー俳優」は多い

「平成仮面ライダー」シリーズが演技派男優を次々輩出する理由

日本アカデミー賞最優秀男優賞も受賞

2019年4月30日で「平成」という年号が終わる。

ある時代が終われば、その時代を象徴する事象に「年号」を冠して語られるようになる。「大正ロマン」「大正デモクラシー」「昭和ロマン」「昭和元禄」……。もうすぐ終わる「平成」だが、まだ終わっていないのに、その年号を冠して語られるものがある。「平成仮面ライダー」だ。

「平成」の象徴ともいえるこの番組には、2000年から19年間、毎週日曜日の朝、男の子たちを熱狂させてきただけでなく、才能の供給源として芸能界に多大なる貢献をしてきた面があるという

 

「役者としての土台を作ってもらった」

オダギリジョー、要潤、水嶋ヒロ、佐藤健、菅田将暉、竹内涼真、福士蒼汰……。

年齢も個性も役柄もバラバラな上記の俳優陣の共通点が一つだけある。彼らはすべて、2000年の『仮面ライダークウガ』から始まった「平成仮面ライダー」シリーズ出身役者なのだ。

「平成仮面ライダー俳優」の売れっ子ぶりはすさまじく、彼らをテレビで見ない日はないと言っていい。そして、今年、菅田将暉が、映画『あゝ、荒野前編』で、「仮面ライダー俳優」として初の日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した。

この「平成仮面ライダー」シリーズには、制作過程の大本に大きな特徴がある。

事務所のパワーやコネが跋扈する昨今の芸能界において、ドラマや映画の配役は力がある事務所やスポンサーの意向で決まっていることが多い。だが、「仮面ライダー」と特撮戦隊ヒーローという2つのシリーズは、現在もメインキャストに関してオーディションを継続しているのだ。

冒頭の俳優陣も、無名時代にオーディションをくぐり抜け、チャンスを掴んでいる。

逆に言えば、「仮面ライダー」と戦隊ヒーローのオーディションは、無名の俳優にとってはスター俳優への登竜門に、業界としてはニューヒーロー発掘のショーケースになっているのだ。

そのオーディションだが、役柄に合わせたある程度の年齢制限こそあるが、参加条件はただ一つ。芸能事務所に所属していること。それだけだ。

その公正かつ峻厳なオーディションと、新人を徹底的に鍛えるタフな現場に、「役者としての土台を作ってもらった」と、演者はもれなく感謝を口にする。

「僕だけじゃないと思うんですけど」

と前置きした上で語ってくれたのは、2009年から放送された、平成仮面ライダーシリーズ第11作目『仮面ライダーW』でエリート警視であり、仮面ライダーアクセルでもある照井竜を演じた木ノ本嶺浩だ。

木ノ本嶺浩、29歳。デビューから10年というキャリアを積んだが、今でも「仮面ライダー」出身であることに誇りを持っている

同作の劇場版の興行収入は約15億円のヒットとなり、『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で連載中の純正続編漫画『風都探偵』が累計90万部と、関連作も好調なメガヒット作品である。この作品の仮面ライダーをW主演で演じたのは、桐山漣と前述した菅田将暉。菅田はテレビドラマ初出演だった。

「まず根拠ない自信を完全に折られます」

そう苦笑いを浮かべる木ノ本は、ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト受賞をきっかけにデビューした、いわば王道の出世街道を歩んでいた逸材だ。『仮面ライダーW』抜擢前にも人気ドラマに複数、キャストとして名前を連ねている。

「そんなの一切、あの現場では関係なかったですね。そこまでもドラマの現場を踏んでいたんですけれど、シーンごとの主軸は自分ではなかったですし」

木ノ本を襲ったのは人気シリーズに参加するという、シンプルな緊張だけではなかった。

彼に仮面ライダーとして最初に本格的な演技をつけたの石田秀範監督だったが、細部までこだわったその指導は、ハタチを迎えたばかりの若手俳優の意識を根底から覆すものだった。