画/おおさわゆう

病院辞めたい…とまで悩む「デジタル恐怖症」な医療関係者の憂鬱

覆面ドクターのないしょ話 第44回

今年、がんの免疫療法の発展への貢献によってノーベル賞を受賞した本庶佑教授や、IPS細胞の研究で2012年にノーベル賞を受賞した山中伸弥教授のニュースを見ると、医学が最先端科学のそのまた最先端を行っている印象を持つ。

ところが、実際の医療の現場は最先端とはほど遠いのが実情らしい。やっとOA化が進んで、「電子カルテ」が導入されたが、実際使いこなすとなると話は別。次郎先生によれば、「電子カルテ」によって、塗炭の苦しみを味わっている人々もいるらしい。

 

医療分野のデジタル化は格段に遅かった

中高年層による事件が起きる度に、「またか……」とつぶやいてしまう。世の中についていけなくなっているのではないかと、この年代の方たちの不安を察せざるを得ない。

医療関係者の中にも、時代の変化についていけずに困っている人たちがいる。

最近やっと、電子カルテを導入する病院が増えてきた。医学は日進月歩なのに、実は、医療分野のデジタル化はなぜか一般企業に比べて格段に遅い。

医療ドラマでは、研修医がiPadを持ち歩いてデータをチェックするシーンがあるが、業務用のiPadなんて通常配布されていない。グーグルの社員の方が医療現場をのぞいたら、

「まさかこんなにローテクだとは!」

と言って、気絶するかもしれない。

カルテには、紙カルテと電子カルテがある。私は個人的には電子カルテが好きだ。メリットはたくさんある。まず、普通にパソコンが使える人なら、カルテの記入が早く済む検査のオーダーもクリックひとつだ。今まで何枚もの伝票を書いていたのが嘘のように簡単に済む。

検査結果も、当然同じ画面上で見ることができる。厚労省は「検査結果をカルテに書いてください!」といちいちうるさいが、電子カルテならさっとコピペすればすむ。

さらに、別の病棟にいる医者と一緒にCTなどの画像を見ながら、ディスカッションして治療方針を決めることもできるので効率的だ。

患者さんにもメリットが大きい。診療が終わってから会計までの待ち時間が格段に短くなる。診療が終わって医者が最後のクリックをしたら、会計はできたも同然の状態なのだ。やはり紙カルテに比べてメリットは大きい。

デメリットも指摘されている。まず、パソコン画面ばかりに気を取られ、患者さんの訴えに耳を傾けない医者が増えた。

深刻なデメリットは、災害が起きて、電気が止まってしまうと、カルテ記入どころかシステムそのものが機能麻痺に陥ってしまうことだ。