以前、漫画の資料を調べていましたら、高等文官試験、つまり現在の国家上級試験や司法試験に合格している小学校卒の人が意外に多いのです。そういう方が警察官僚や裁判官になっていました。すべて独学で法律書や経済書を勉強したということです。偉いとしか言いようがないのです。
小卒でも松下幸之助、本田宗一郎、田中角栄という人たちが有名ですが、そういう人以外の無名な人々も頑張っていたということです。頭が下がるのであります。
さて、『路傍の石』の主人公・吾一君も勉強ができても中学に行けません。父親は借金こさえて行方不明、母親は体が弱く袋張りの内職しかできません。そこで丁稚奉公に行きます。
他人に何度踏みつけられようが立ち上がる。岩盤を突き破るように自分の意志を通していくのです。その何が何でも生きてみせるという姿勢が心を震わせるのであります。
21世紀になっても日本は不安だらけです。しかしもっと不安だった1930年代を生き抜く男の物語は、私たちに何らかの示唆を与えてくれるでしょう。
今回は総ルビ、つまりすべての漢字にフリガナを付けました。できれば親子で読んでいただきたいと思うのです。
物語の手法としては、今流行りの少年誌風の演出ではありません。
オーソドックスな20世紀の少年マガジンの手法です。
「友情、努力、努力、そして努力で勝利」です。