私は、経営者には「夢」、「志」、「使命感」がなければならないと考える。
使命感を行動に表すには何が必要か。
また、夢を実現する強い意思とは何か。
それは「胆力」、言い換えれば覚悟に他ならない。
胆力がなければ、使命感を行動に移すことも、意思を貫き通すこともできない。経営トップは誰しも、失敗したくないと考えている。
しかし、失敗を恐れずに新しいことに挑戦しなければ企業は変わらない。
変わらないと企業は潰れる。
したがって、トップたる者、リスクを恐れずに新しいことに挑戦し続けなければならない。そのためには、失敗を恐れない胆力が必要となる。
この点、山下良則はどうか。
山下は2017年、社長に就任すると「リコー再起動」を宣言。ビジネスモデルの変革を掲げ、聖域なき構造改革を主導する。
山下改革で特筆すべきは、ビジネスモデルの抜本的変革だ。
山下は、リコーの成長を支えてきた5大原則──「ものづくり自前主義」「直売・直サービス体制」「マーケットシェア追求」「MIF(複合機の設置台数)機拡大」「商品フルラインナップ」を見直すと訴え続けている。
では、ビジネスモデルをどう変えるか。
市場が成長している時代は複合機を売りさえすれば、用紙・トナーの消耗品とアフターサービスで利益が出た。
ハードウエアの開発競争に勝つことで競争優位を保つことができた。
しかし、ペーパーレス化が進むにつれ複合機や消耗品の需要は低迷、価格も下落した。そこで、複合機に顧客が求めるソリューション(課題解決)機能を乗せ、顧客に付加価値を提供するビジネスモデルへと変革する。
つまり、顧客の業務に合わせて、複合機を社内システムと連携させたり、外部のクラウドサービスと連携させるなど端末として活用してもらう。
改革の肝は、まさにデジタル技術によるビジネスモデルの変革にあると言える。