異性と関わりたくない…ハラスメントが拡大する「快適な社会」の代償

他人との関係が「リスク化」する時代に
御田寺 圭 プロフィール

「ソロ人生」を選ぶ日本の若者たち

筆者は年齢的に、日本が好景気に沸いていたころの様子は伝聞程度でしか知らないのだが、会社組織はかつて「男女の出会い(結婚)の場」として機能していたらしい。

しかし現代社会の感覚で考えれば、会社の同僚や取引先の人を異性として見たり、まして無闇にアプローチをかけたりすることは、とりわけ若い世代にとっては、下手をすると身の破滅を招きかねないハイリスクな行為だと感じるのではないだろうか。

地縁的結合が弱体化してお見合い婚がほとんど消滅すると、男女の出会いの場は地域社会から会社組織によって代替された。しかしその会社組織も「ハラスメント」の概念が浸透するにつれ、男女のマッチング機能を喪失し、いま若者世代は急速に「交際相手なし」の「ソロ人生」へと移行している。

国立社会保障・人口問題研究所の『第15回出生動向基本調査』によれば、交際相手のいない未婚者の割合は男性69.8%・女性59.1%であり、どちらも5年前の調査(男性61.4%、女性49.5%)より大きく増加している。交際相手がおらずなおかつ交際を望んでいない未婚者は、男性で全体の30.2%、女性で25.9%を占めた。

女性からすれば「意に添わない相手にお近づきになられるくらいなら、独身のほうがまし」という考えも一理ある。一方の男性からすれば、「大金をかけて、一生を棒に振るかもしれないリスクを背負ってまで、恋愛するメリットなんてあるのか」と思うのかもしれない。少なくとも、男女双方ともが多大なリスクやコストをかけてパートナーシップを築くインセンティブが、かつてほどはなくなってきていることは確かだろう。

 

「MGTOW(ミグタウ)」は何を語ったか

しかしながら、この事実は悲観すべきものなのだろうか。男女間の交際(に対する社会的な要請や、そうすべきだという圧力)が少なくなったということは、それぞれが無用な干渉を避け、自分の人生を大事に生きられるようになったともいえるかもしれない。

いま、アメリカで局所的だが着実なブームとなっている「MGTOW(Men Going Their Own Way:わが道を行く男たち)」は、いわゆる「#MeToo」運動に対するバックラッシュ(反動)と目されている。

女性と関わることそのものから降りて、自分たちの好きな道を歩んでいく男性たち――それはまさに、他人からのあらゆる「不快で加害的なかかわり」をハラスメントとして(主に女性側が)告発する風潮に対して、男性側がひとつの「回答」を示した事例のようにも見える。

実際にMGTOWを自称する人物と話したことがある。

彼らの多くは「自分が加害者とされること」のリスクを重大に見積もっている。いわく、現代社会はむかしよりも男女双方に機会が開かれているにもかかわらず、男女のパートナーシップについては、男性が優位でリードしなければならないという価値観がいまだに根強い。それは男性だけが支持しているわけではなく、女性も「強い(社会的・経済的にすぐれた)男性に惹かれる」傾向があり、双方はある意味で「共犯関係」となっている。

それにもかかわらず、男性側ばかりが「リスク」を負わされるのでは、たとえMGTOWを自称していなくても、「わが道を行く男たち」は増えていくだろう――。そう彼は語った。

「男性だけでなくて、女性がリードするような風潮が同じくらい強くなるか、それができないのであれば、男女関係を結ぶ前に『私たちは、お互いの親密な関係づくりをするにあたって、お互いのふるまいを法的な問題にしません』といった文面の契約書を最低でも取り交わすくらいでないと、この問題は解決しようがない」とも。