異性と関わりたくない…ハラスメントが拡大する「快適な社会」の代償

他人との関係が「リスク化」する時代に
御田寺 圭 プロフィール

クリスマスパーティーが消える

一方で、少なくともそうした世代よりもハラスメントへの意識が高い若者層は、ハラスメントとされる領域が拡大していることと、またなにがハラスメントに当たるかは相手の主観的判断に依存する部分があり、なおかつ結果論的にジャッジされるという性質を理解しているので、ますます異性とのかかわりに慎重にならざるを得ないだろう。

実際にアメリカでは、「プライベートな文脈を帯びる可能性がある、異性との接触機会はなるべく避ける」という傾向が見て取れるようになってきている。

〈業績は良いのだが、クリスマスパーティーは開かない。そんな米企業が増えているようだ。これはセクハラや性的暴力を告発する「#MeToo」運動の広がりが一因かもしれない。

コンサルティング会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスが(11月)6日に公表した調査リポートによると、ホリデーを祝うパーティーを今年開く企業は65%にすぎない。これは2009年以来で最も低い割合だという〉「クリスマスパーティー、米企業で減少傾向- #MeToo の影響も」『Bloomberg』2018年11月7日より)

〈女性の同僚と夕食を共にするな。飛行機では隣り合わせで座るな。ホテルの部屋は違う階に取れ。1対1で会うな。これらが近頃のウォール街で働く男性の新ルールだ。要するに、女性の採用は「未知数のリスク」を背負い込むことなのだ。女性が自分の一言を曲解しないとは限らない。

ウォール街全体で男性たちは今、セクハラや性的暴力を告発する「#MeToo」運動への対応として、女性の活躍をより困難にするこんな戦略を取りつつある。妻以外の女性とは2人きりで食事をしないと発言したペンス米副大統領にちなんで「ペンス効果」とでも呼ぶべきだろうか。その結果は本質的に、男女の隔離だ〉「ウォール街、「#MeToo」時代の新ルール-とにかく女性を避けよ」『Bloomberg』2018年12月4日より)

 

他人から意に添わない形で不愉快な思いをさせられたり、ましてや加害されたりすることなどなるべく少ない方が「よい社会」であることに、ほとんど異論を唱える人はいないだろう。

しかし、なにが加害(ハラスメント)になるかがはっきりとしない場合は――たとえば傷害罪や窃盗罪のような明確な基準があるものとは異なり、その基準が相手の「気持ち」次第で結果論的に判定される可能性もある場合は――どうだろうか。

社会的制裁のリスクをかえりみず欲望や衝動に突き動かされるような人や、あるいは「自分なら大抵の相手には受け入れてもらえる」との確信を抱いている人を除けば、コミュニケーションにおいてなにが加害とみなされるかわからないような状況では、ほとんどの人びとは他人とのかかわり自体に消極的になっても無理はないだろう。