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大塚英樹が迫る!野村HD・永井グループCEOの知られざる「流儀」

会社を根底から作りかえた男の覚悟
大塚英樹

若い頃からの疑問を3つの改革に

グループCEOに就任した永井は、「会社を根底から創りかえる」と宣言し、直ちに社員の意識改革から始めた。

課題は、①信頼回復、②ビジネスモデルの変革、③セクショナリズムの撤廃の3つ。

いずれも永井が若い頃から疑問に感じ続けていたことだ。

つまり、永井は、潜在していた問題がここへ来て顕在化し、このままだと経営不振に陥ってしまうと危機感を持っていたわけだ。

永井が、顕在化した今こそ千載一遇のチャンスと改革に心血を注いだ理由である。

 

1つ目は、信頼回復

不祥事の真因は、「世のため、人のため」に仕事をするという企業文化が埋め込まれていないことにある。

永井は、世の中、社会の役に立つ、すなわち、社会貢献に見合わない利益を求めてはいけないということを明確に示し、社員に徹底して理解させる必要があると考えた。

8月3日を「野村『創業理念と企業倫理』の日」と定め、社員に過去の不祥事報道や企業理念を訴えたビデオを見せているのは、過去の不祥事を風化させないためである。  

2つ目は、ビジネスモデルの変革だ。

営業スタイルを従来の売りたい商品を一方的に勧めるというやり方から、顧客のニーズに合わせて商品、サービスを提案する方式へ転換した。  

グローバル体制も変えた。野村は2008年、リーマン・ブラザーズのアジア・パシフィック地域部門及び欧州・中東地域の株式部門・投資銀行部門を継承し、グローバルビジネスを拡大した。

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しかし、永井にはかねて「何のためのグローバル化なのか。単なる自己満足ではないのか」という疑問が付きまとっていた。

そのため、取り組むビジネスの範囲を顧客に求められている付加価値のあるビジネスに絞り込むことにした。  

3つ目は、「セクショナリズムの排除」。野村は、リテール(営業部門)とホールセール(法人部門)の2部門が相互に専門性を高めるマネジメントを行ってきた。

部門ごとに、しきたりやルールを作るようになり、他部門の干渉を遠ざけ、〝異物〟を排除するようになっていた。

各部門がそれぞれの利益を最優先するため、部門間に壁ができ、個々の部門が自分最適を考え、全体最適性を失っていたのだ。  

そこで永井は、全体最適の基準を「すべてはお客様のために」と規定し、行き過ぎた部門制の是正に着手した。

大幅な人事異動を実施し、役員には年4~5回の部門間交流を義務づけた。  

見逃せないのは、永井のビジョンや理念を徹底させることへの強いこだわりだ。

グループCEO就任以来、150支店以上を回り、精力的に社員との対話を続けている。

理念、ビジョンを徹底するためには、愚直に自分の言葉で繰り返し語り続ける。そして、言行を一致させる、すなわち、自分の理念や方向性通りの会社運営を実行することだと確信して改革を進める。  

永井は、危機を新しい方向性を見出すチャンスとして生かしている。