危機を千載一遇のチャンスに転化する。
追い詰められたときこそが新しい方向性を見出すチャンスである──。
言葉で言うのは簡単だが、危機は焦りにつながり、自社のこれまでのすべてを否定してしまい、規律を失い、悪循環に陥る企業は多い。
危機をチャンスに転化するトップは、危機の中でも冷静さを失わずに自分で考えて、考え抜く。
そして過去を否定し、前へ突き進む覚悟と胆力があると考える。
その点、永井浩二はどうか。
永井が野村ホールディングス代表執行役社長・グループCEO(最高経営責任者)に就任したのは2012年8月。
中核企業の野村證券の社長になって4ヶ月後だった。
当時、野村の公募増資に関わる公表前情報を漏洩した「増資インサイダー問題」への関与が発覚、グループCEO、同COO(最高執行責任者)が辞任したのに伴い、野村證券社長を兼任する形でグループCEOに就任。信用が失墜した折だった。
それまでも野村證券はバブル崩壊後の1991年には「損失補填問題」、1997年には「総会屋への利益供与事件」と過去二度、不祥事を起こしており、これが三度目だった。