Photo by gettyimages

フランスデモ、怒りの根底にある「庶民軽視・緊縮財政」の現代史

マクロンは折れた様子を見せているが…

ここのところフランスを騒がせているのが「ジレ・ジョーヌ」と呼ばれる運動である。黄色いベスト(ジレ・ジョーヌ)を着用した人びとが、デモや道路封鎖をおこない、エマニュエル・マクロン政権批判を叫ぶ光景が、日本でもテレビから流れてくる。

これを受け、マクロン大統領は、最低賃金を月額100ユーロ(約1万3000円)引き上げるなどの対応を取らざるをえないところまで追い込まれた。

それでは、この運動は、そしてマクロン大統領の対応は、どんな性格と特徴をもっているのだろうか。長期(フランス革命前後から今日)中期(ここ半世紀)、そして短期(マクロン政権成立前後から今日)にわけて、歴史的な観点から読みといてみたい。

なお、日本の報道では「シャンゼリゼの高級ブティックが略奪にあった」とか「車がひっくりかえされている!! 警察の催涙ガスが漂って外出できない!!」とかいったニュースが好んで流されているが、これら蛮行のほとんどは「ブラックブロック」と呼ばれる破壊・略奪・騒ぎを好む一群のバカどもの仕業であり、ジレ・ジョーヌは彼らに騒ぐ機会を与えているにすぎない。ジレ・ジョーヌ参加者のほとんどは、いわゆる庶民である。ここで問題とするのは後者である。

〔PHOTO〕Gettyimages

1.長期:三度の革命を経験した国

デモ、スト、道路や公共施設の封鎖など、いわゆる直接行動を好むのは、フランス人の国民性といってよいかもしれない。小規模なものだったら一年中各地でみられるし、今回のジレ・ジョーヌ程度の規模のものであれば大体10年に一度は起こっている。

ちなみに直近のものは2006年の初期雇用契約法反対運動であり、その前は1995年の「ジュッペ・プラン(社会保障制度改革)」反対運動だろうか。フランス人は直接行動マニアなのだ……というよりは、彼らからすれば「日本の庶民はこんなに大変なのに、なんでデモもストもなんにも行動しないのか?」ということになるだろう。

これまでフランスは3回の革命(1789年のフランス革命、1830年の七月革命、1848年の二月革命)を経験してきたが、いずれにおいても、庶民の直接行動が大きな役割を果たしている。

 

フランス革命初期に国王をベルサイユからパリに連行したのも、七月革命や二月革命において軍と対峙し、軍が国王から離反する契機を生んだのも、パリをはじめとする各地の庶民の行動であった。

これら経験を通じて、フランス人は、直接行動は一種の権利であり、政治参加の形態であり、そして、かなり有効なものであることを理解している。ジレ・ジョーヌも、フランス史を彩るこれら直接行動につらなるのであり、その意味では例外的な事態ではないといってよい。

2.中期:対立軸の転換

第二次世界大戦後しばらくのあいだ、フランス政界では、庶民を支持基盤とする左翼と、中間層からエリートを支持基盤とする右翼が対立する構図がみられた。

有名な大統領でいうと、フランソワ・ミッテラン(社会党)やフランソワ・オランド(社会党)が左翼、ヴァレリ・ジスカールデスタン(独立共和派、のちフランス民主連合)が右翼である。