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〈コミュ力不安〉という病に憑かれた「センター試験改革」の危うさ

いま「ことばの教育」が危ない

2021年からセンター試験に代わり「大学入学共通テスト」が始まる。サンプル問題が公開され、プレテストも実施されたが、その中身は十分に吟味されたものとは言い難い。日本大学教授の紅野謙介氏が英語・国語の出題の問題点を解説する。

加えて紅野氏は、拙速な改革の背景には大人たちの「病」があるのではないかと指摘する。それは「コミュニケーションへの固執」という病だ。形式的で空疎なことばがはびこる社会に対する大人たちの不安、その裏返しとしてのコミュニケーションへの固執こそが改革を呼び寄せているのではないかーー。

新共通テストの開始

いまの高校1年生が受験する再来年、2021年1月には、センター入試ではなく「大学入学共通テスト」という新しい試験になる。名称だけでなく、内容にも大きな変化が予定されている。

現行のいわゆるセンター入試、「大学入学者選抜大学入試センター試験」が始まったのが1990年。現在の試験形態になって、およそ28年がたった。このセンター入試の導入のときもさまざまな論議を呼び、何回も試行調査を重ねた上で、実施に移された。

しかし、その後、くりかえし試験トラブルがあったことは周知の通り。とりわけ英語のリスニングをめぐる機器の不調で、再試験があいついだことを記憶している人も多いだろう。

今回の改革について試験に限って説明すると、改革のポイントは2つにまとめられる。

① 「英語」の資格・検定試験の活用
② 「国語」「数学」における記述式問題の導入

(大学入試センター「「大学入学共通テスト」における問題作成の方向性等と本年11月に実施する試行調査(プレテスト)の趣旨について」平成30年6月18日より)

これに加えて、「マーク式問題における新たな解答形式」も検討されている。「当てはまる選択肢を全て選択する問題や、解答が前問の解答と連動し正答の組み合わせが複数ある問題など」が想定されている。さまざまな資料を対照させながら、適切な情報を見出し、組み合わせて考える複合的な能力が問われているのである。

「英語」の民間試験導入

まず、厳しい批判を浴びることになったのが、①の英語の民間試験の導入案である。語学に欠かせないのが4つ技能(読む・書く・話す・書く)である。このうち、これまでセンター試験では「話す」「書く」能力を計ることができなかった。英語を話し、書く能力こそ、これからは必要ではないかというわけである。

リスニングで機器のトラブルが多く発生したのに、今度はスピーキングを加えたい。しかし、どうやって? 試験場でみんなが英語を話し出すわけにもいかないではないか。

そこで提起されたのがスピーキング等を取り入れている民間試験の導入である。英検、TOEIC、TOEFL、GTEC、TEAPなど8種類の民間企業・団体の主催する英語の試験結果を評価に取り入れる。

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初めの4年間は民間試験のほかに、共通テストに「英語」を残して共存させるが、数年後には共通テストから「英語」をなくし、民間試験に一元化する予定だという。

文科省は高い得点から低い得点までをC(熟練)、B(自立)、A(基礎)の3つの段階に分け、さらに各段階を2つに区分して、C2からA1まで6段階に分類し、各試験のスコアがどの段階からどの段階にまたがるかを図示してみせた。

 

その対照表をにらんで、受験生は自分のスコアに応じて、自分はA2だとかB1だとかの判定を受ける。それを出願基準に使う、あるいは点数に換算して試験の合計点に加えるなどの判断を各大学が行えばいいというのである。