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「死んでまで一緒はイヤ…」日本で死後離婚と夫婦別墓が増えた理由

姻族関係まで絶つ人もこの10年で急増

「死後離婚」という現象

私は長年、葬送分野をフィールドとしてきた。死や葬送をファインダーにして見えてくる家族の変化にはとても興味をそそられる。

その一つが「死後離婚」という現象だ。そこからは戦後社会の変化が如実に見えてきて、実に面白い。

ここ数年のマスコミ報道を見ると「死後離婚」とは、配偶者の死後に、「姻族関係終了届」を出すことと定義しているものが多い。

これは先行文献を踏まえなければならない私のような研究者から言わせてもらうと、近年顕著になってきた現象だけを捉えているに過ぎない。

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そもそも「離婚」という言葉は、夫と妻の関係性を表わすものであって、「姻族関係終了届」のように、配偶者の死後に、自身と姻族(配偶者の父母兄弟姉妹)との関係を絶つことだけに「離婚」の語を使うのは適当であるとは思えない。

言葉は生きものだから社会によって変化する面もあるが、「死後離婚」の語は以前からあり、夫婦が死後に墓を別々にする現象、特に妻が夫や夫の親族と同じ墓に入ることを拒否し夫と別墓にする現象を、私が「死後離婚」と呼んだことに端を発している。

 

私は1989〜90年に意識調査を実施し、「夫と別墓」を希望する妻たちが3割以上いることを確認した。これは当時『朝日ジャーナル』(1989年9月20日91頁)で紹介され話題を呼んだ。また拙著『現代お墓事情』(1990年、創元社)でも紹介した。

その後、死後離婚をした人たちのインタビュー記事を『墓をめぐる家族論』(2002年、平凡社、第1章死後の離婚)で取り上げている。

その語は、「post-mortem divoce」(死後離婚)として海外にも紹介された。たとえば「The Daily Telegraph」が2003年2月22日に、「Divorce beyond the grave for Japanese wives」というタイトルで取り上げた1。それは「The Word Spy」というサイトに単語や意味、出典などが紹介されている2

生きているうちは離婚せず、死んでから縁を切る死後離婚が、日本的な現象だとして注目された。