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「料理」「言葉」「食」…3つの世界の奥深さを知る本10冊

玉村豊男さんの読書日記

「余白に生きる」ことの重要性

私のベスト1は、ジャン・グルニエの『孤島』です。

大学では仏文学を専攻していたんですが、当時の主任教授だった井上究一郎さんが訳された本が出て、授業の一環でその一部を読みました。

内容としては哲学的な随想で、「余白に生きる」ことがテーマとしてあります。自分の精神を保つには「余白」、言い換えれば、人に知られない自分だけの領域が必要というのが作者の主張です。

誰にも知られていない土地に手ぶらで行って、作りものの身の上話をして、その場限りの暮らしをするようなことが一番いいのだ、と。

大学3年の頃から、私は将来のことで悩んでいました。それだけに、社会的な軋轢から逃れて、自分の大切なものは人に教えずに過ごすという生き方は、斬新でした。私の考え方を、精神的に位置づけた本だと思います。

 

言語学には高校生の頃から興味を持っていて、大学の在学中には、パリ大学の言語学研究所に留学しました。

言語学の関連書籍もいろいろと読みましたけど、『思想と行動における言語』は特に影響を受けた一冊です。

本作は、言語と社会を関連付けてのアプローチがなされています。例えば犬という言葉は、人によってイメージが違いますね。みんながそれぞれのイメージを、言葉の中に込める。

ポチとタロは別のもので、またポチでも、子犬の頃のポチなのか、大人になってからのポチなのか。分解するとさまざまな広がりがあって、人が言葉に込めているものは、表からだけではわからない。

逆に言えば、具体像を捨てることで初めて言語は成り立つんです。コミュニケーションにおいては、上部概念を語らないと話が通じない。言語という存在について、本作に出会ったことでより理論的に考えられるようになりました。