先生がゲイだった! そのとき、生徒たちはどう思ったか

中学の教壇に立つ僕がいま思うこと
鈴掛 真 プロフィール

教壇の上で生徒たちにカミングアウト!

中学校の授業は、1教科45分。1クラスごとに45分の間で、和歌の成り立ちや、短歌の創作のコツなどが学べるカリキュラムを用意しています。
問題は、どうやってLGBTの話を切り込むか。

始業前、廊下を歩くと、すれ違う何人もの生徒が「こんにちは!」と元気良く挨拶してくれます。

教室に入ると「先生、イケメン!」と褒めてもらえることも。少し照れながら教壇に上がって、チャイムが鳴ったら「起立、礼」の号令で授業が始まります。

「はじめまして、鈴掛真です。短歌の先生が来るって聞いて、どんなおじさんが来るのかなと思ったかもしれないね。年齢は、みんなの倍くらいかな。春日井市で生まれ育って、今は東京で仕事をしています。今日は、言葉で表現することの面白さを伝えられたらと思います」

 

見慣れない講師の先生に、みんな興味津々。
教室の後方では、春日井市の職員たちや、国語の先生、学級主任の先生、校長先生まで視察にいらっしゃることがあるので、さながら授業参観日のよう。
注がれる数十の視線に緊張しながら、授業の中で最も勇気のいる瞬間がやって来ます

「ところで、みんなは『LGBT』という言葉を聞いたことがあるかな? これはレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの略で、近年、男の子同士や女の子同士でも恋愛したって良いんじゃないか、という考え方が少しずつ日本の中で広まりつつあります。僕もゲイの一人として、同性愛者の存在を社会の中でもっと身近に感じてもらえるような仕事にも取り組んでいます。さて、これから短歌の授業に入るわけだけど、その前に何か質問ある人はいるかな?」

先生からの突然のカミングアウトに、目を丸くする子どもたち。

すると、やんちゃそうな男子生徒が、率先して挙手します。

「初恋はいつですか?」

いささかムチャ振りな恋愛トークに、生徒たちのテンションがアップ!
先生たちも「うちの生徒がすいません!」と言いたそうな顔で苦笑いしています。
「中学校1年生のときに、同級生の男の子を好きになったのが初恋かな。ちょうど今のみんなと同じ歳のときだね」

すかさず、もう一人の元気な男子生徒も挙手。

別の中学では、「好きな食べ物はなんですか?」という可愛らしい質問しか出なかったときもあった Photo by iStock

「じゃあ、このクラスの中だったら誰がタイプですか?」

「コラッ!  先生もう30歳超えてるんだよ!  それで君たちの中から好きなタイプを選ぶって、それはさすがにマズいんでないかい!?」

生徒も先生たちも大爆笑で、廊下の外まで笑い声が漏れるほど大いに盛り上がりました。

空気が充分に暖まったところで、やっと短歌の授業に入ります。

もしも45分間LGBTの話を聞かされると思うと、子どもたちは退屈するかもしれないけれど、僕はこのようにアイスブレイクの一環としてのカミングアウトに留めるようにしています。

その方が、同性愛者は特別ではなく身近な存在だということを体現できると思うからです。

そして、基本的に生徒たちからのどんな質問にも答えるつもりです。
もしかしたら、同性愛について否定的な意見が挙がるかもしれない。それでもOK。
まずは、同性愛者と面と向かって意見を交わす機会を子どもたちに与えることが大切。

テレビやインターネットなどの一方的に与えられる情報だけで同性愛に嫌悪感を募らせるより、たとえ意見のぶつかり合いになったとしても生身の同性愛者と対峙する方が、子どもたちの精神の発育に良い影響を与えると思うのです。