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武田薬品の「大バクチ」7兆円巨額買収が日本社会に問いかけること

リスクは大きいがこのままではジリ貧だ

国内製薬最大手の武田が、総額7兆円という日本企業としては最大規模のM&A(合併・買収)を決断した。同社はガラパゴスの典型といわれる日本の製薬業界で唯一、グローバルに戦えるポテンシャルを持つとされてきたが、思い切った買収ができず、このままでは本格的なグローバル化を実現できない状況となりつつあった。

今回の決断は、武田にとって世界に飛躍する最後のチャンスだったが、同時に国内トップという居心地のよい環境に後戻りすることもできなくなった。同社は従来の立場を捨て、グローバル市場における挑戦者にシフトしたことになる。

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医薬品メーカーに残された3つの道

武田薬品工業は2018年12月5日、臨時株主総会を開催し、アイルランド製薬大手シャイアーの買収について株主の承認を得た。買収金額は何と7兆円近くになる見込みで、武田自身の時価総額をはるかに上回る巨額買収が実現する。国内企業のM&Aとしては過去最高金額である。

今回の買収提案については、自身よりも時価総額が大きい企業を買収するというリスクの高いスキームであったことから、創業家など一部の株主が反対を表明していた。

武田はオーナー企業ではあるが、創業家は数%の持ち分しかなく、創業家出身の経営者だった武田國男氏は2003年にトップを退任しており、事業には直接タッチしていない。過半数の株主は機関投資家という状況なので、総会では大きな混乱もなく買収提案が可決された。だが、今回の決断が創業以来の「大きな賭け」であることは間違いない。

 

武田がこれだけリスクの大きい買収を決断した背景となっているのは、このままではグローバル市場に取り残されてしまうという危機感である。

同社は国内トップの製薬会社だが、グローバル市場では中小企業に過ぎない。武田の2018年3月の売上高は約1兆8000億円。これに対してロシュやノバルティス、ファイザーといったトップグループの企業は軒並み5兆円規模の売上高がある。

製薬業界は新薬の開発に巨額投資を行う必要があり、企業体力が小さい企業は圧倒的に不利になる。一方で、ジェネリック医薬品の普及によって、製品のコモディティ化も急速に進んでいる。

グローバル市場においては、圧倒的な規模を持つ巨大製薬メーカー(いわゆるメガファーマ)になるか、ジェネリックのメーカーになるか、もしくは特定分野にフォーカスしたニッチ・メーカーになるのかという3つの選択肢しかない。

今回の買収で武田の売上高は4兆円に近づき、何とかメガファーマの一角を占めることが可能となる。