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後世、あなたが生きた平成は歴史の教科書にこう書かれる

「未来の教科書」を読んでみる

犯罪動機の大きな変化

《平成時代の初頭、戦後長く続いた冷戦が終結し、平和な時代が続くかと思われた》

後世の歴史教科書では、平成の項目の冒頭には、このような言葉が載るかもしれない。

昭和の時代には、第二次世界大戦へと向かう戦争があり、戦後も米ソによる冷戦が続いた。その西側と東側の対立がついに終わると同時に始まったのが平成だった。

ジャーナリストの田原総一朗氏は言う。

「'89(平成元)年の冷戦終結で、戦後まったく行われなかった軍縮も協議され、どうすれば経済をよくできるか、各国が話し合うようになった。人々は、平和な時代の到来を期待したのです」

しかし'91(平成3)年には、イラクによるクウェート侵攻から湾岸戦争が勃発する。

世界情勢が緊迫する一方で、日本国内では一種の平和ボケした時代が続いていた。

未来の教科書は、コラム欄でこう記述するだろう。

《平成になって変化したのは、人と人との関係の在り方だ。昭和から受け継がれた共同体が、個人主義によって解体されつつあったのである》

ライターの速水健朗氏が語る。

「例えば、飲み会の変化があります。ビールの消費量がピークを迎えたのは'94(平成6)年のことです。日本企業の『飲みニケーション』文化が盛んで、みんなで一緒にビールを飲むというのが当たり前でした。

それが、平成が進んでいくと、『とりあえず生(ビール)』という文化がまずなくなりました。さらに、ビール以外を頼むという人も増え、それ以前に飲み会自体を開催しない、という時代にまでなった」

 

みんなで何かをすることがなくなっていったのが平成だった。さらにタワーマンションが乱立する都市部と地方の格差、就職氷河期を経験し非正規で苦しむ人々とバブル世代の格差など、格差社会も顕在化していった。

《平成時代は、昭和的な「一億総中流」が崩壊した時代でもあった》

未来の教科書の記述はこう続く。

平成時代では、こうして「バラバラになった個人」の一部が凶悪な事件を起こしている。

《オウム真理教による一連の事件では、関わった高学歴の若者を含め、13人の死刑が執行された》

平成で最も大きな事件、'95(平成7)年の地下鉄サリン事件も、歴史に刻印されるはずだ。

その他、'97(平成9)年の神戸連続児童殺傷事件、'98(平成10)年の和歌山毒物カレー事件などの無差別殺人も相次いだ。事件記者として、昭和から平成へと取材を続けてきたジャーナリストの大谷昭宏氏は語る。

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「昭和の事件は3億円事件にグリコ・森永事件と、一挙におカネを手に入れようという動機がある事件が多いのです。あさま山荘事件や、よど号ハイジャック事件など思想的な事件も相次ぎました。

一方、平成の凶悪事件の特徴は、動機が物欲や貧しさからくる欲望ではないことです。地域に溶け込めないからや、逆恨みなど、物欲以外の人間の業に突き動かされて事件を起こすのです」

21世紀に入っても、'01年の池田小事件や'08年の秋葉原の無差別殺傷など、歴史教科書には載せきれないほど多数の凶悪事件が起きている。

「『極端な格差社会』が進めば、時代が逆戻りして昭和のような貧困から生まれる犯罪も増えるのではないかと懸念されます。同時に、動機の分かりにくい、精神的な歪みや飢餓感からくる犯罪も続くはずです」(大谷氏)