金利をあげれば「デフレは終わる」といえるこれだけの理由

ゾンビ企業から個人の預貯金にお金を
大原 浩 プロフィール

異常時の金融緩和は効果が薄い

そもそも、大規模な量的緩和は「異常時」に発動されるので、銀行はいくら潤沢に資金が供給され調達コストが安くても、貸し出しをすればその企業が破綻して焦げ付くと恐れて融資を手控える。実際、米国、日本、欧州ではそうなった。

その結果、中央銀行が供給した資金は市中の民間銀行から中央銀行の当座預金としてブーメランのように還流し滞留する。

中央銀行が供給した資金は、金融機関の中でぐるぐる回っているだけで、肝心の民間企業へ流れないのである。

資金供給といっても「借りた金は返さなければならない」のがルールである。そのことを一番よくわかっているのが、民間の金融機関である。いくら金利が安いといっても、大規模金融緩和時の経営環境の厳しい時に挑戦的なビジネスを行っている企業に融資する勇気は無い。

その結果、融資の利ザヤがどれだけ薄くてもきちんと返済してくれると思われる一部の優良大企業への融資に集中し、それらの大企業には資金があふれる。

さらには、将来性が無くても、低金利だから何とか返済できるゾンビ企業が生き残り、それらの企業の過剰が、他の優良企業の足を引っ張ることになる。

一般に、不景気の原因は「供給過剰」による部分が大きいことは、前述の「異次元緩和でも日本にインフレが起こらない極めてシンプルな事情」の記事で詳しく述べているが、低金利も不景気の大きな原因の1つであることは確かだと考える。

 

需要がないのに資金を供給しても

エンゲル係数という言葉は読者にもなじみが深いと思う。人間の胃袋の大きさは金持ちも貧しい人も同じであり、収入が増えても食費はその収入カーブよりも緩いカーブでしか増えないという理屈に基づいている。

ちなみに日本のエンゲル係数は、特にコメなどの輸入規制で元々食品価格が高い上に高品質志向なので、先進国ではかなり高水準にある。カリフォルニア州の農業関係者の話では、農作物のうち、最も見た目がきれいなものが日本向け、その次のグレードが米国内向け、最もグレードが低いものが欧州向けだそうである。

これは筆者の定義なのだが、このような食品に関わるエンゲル係数を「特殊エンゲル係数」、食品を含めた消費全体の指数を「一般エンゲル係数」と名付けてみる。

「特殊エンゲル係数」は、消費支出全体に占める食費の割合だが、「一般エンゲル係数」とは、収入全体に対する消費の割合を示す。

金融緩和によって資金を供給しても、一般消費財の消費=「一般エンゲル係数」は緩やかにしか上昇しない。つまり、いくら収入が増えてもそれが消費に直結するわけでは無いということだ。

普通の消費者は、10台の自転車を買う資金が手元にあるからと言って、特別な必要が無い限り、そんなにたくさんの自転車を買ったりはしない。

特に、現代においては、先進国の消費者は「欲しいものは何でも持っている」といわれる。いくら金をばら撒かれても買いたいものが無いのだ。特にインターネットの世界では、多くのものが無料で手に入る。

大事なのは、消費者に「欲しい」と思わせる商品やサービスを供給することであり、その創意工夫を引き出すためにはコストの安い天から降ってくるような資金よりも、苦労して獲得したコストの高い資金の方がプラスだと考える。

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