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金利をあげれば「デフレは終わる」といえるこれだけの理由

ゾンビ企業から個人の預貯金にお金を

空前の企業利益と老後不安は低金利が原因

1990年初めの株式市場暴落をきっかっけとしたバブル崩壊からもう30年近くが経つ。2012年末からのアベノミクスのおかげだけとは思わないが、安倍晋三氏が首相に就任してから、日本経済がどん底を脱出して回復の道のりを示していることに異論を述べる人はいないだろう。
 
しかし、現在にいたるまでの日本の景気回復に、アベノミクスや黒田バズーカとよばれる超金融緩和政策がどれほど貢献したのかの評価は慎重に検討しなければならない。実際、2003年の、りそなショックあたりのどん底から2007年頃まで、日本経済は自律的な回復を見せていた。

ところが2007年のサブプライム・ショック、続く翌年のリーマン・ショック、さらには2011年の東日本大震災・福島原発事故で大きな打撃を受け、いまだに揶揄される当時の政権政党のだらしなさもあり日本は「危機的状況」に陥った。

外交なども含めて、安倍首相は歴史に名を残す宰相だと思うが、こと日本経済に関しては安倍氏や黒田氏がいなくても「まともな」人々がリーダーであれば、それなりによくなっていたはずだ。

日本人が極めて高いモラルを持った勤勉な民族であることを忘れてはならない。

むしろ、各方面からの圧力によって「空前絶後の低金利」を長期間維持したことは失策であったと考える。端的に言えば「ゾンビ企業」を温存させ、さらにその「ゾンビ企業」の供給過剰によって、日本経済回復を遅らせたのだ。

また、現在の上場企業の空前の利益は、低金利という政府からの「補助金」によるところが大きい。

例えば会社四季報によれば、日産自動車の有利子負債は8兆円弱であるので8兆円として計算してみる。保有資産の金利等は無視するとして、大企業なので借り入れ金利は1.5%としよう。年間の利払いは1200億円になる。もし、金利が上昇して6%になったとしよう。利払いは4800億円になり、2018年3月期の純利益約7500億円の大部分が吹きとぶ、

年利6%は歴史的に見て、企業の借入金利としては標準であり、もっと高騰すれば利払いだけで赤字転落である。

 

さらに言えば、官僚・公務員などの収入が保証された人々にとっては、低金利やデフレはとても都合が良い。収入が一定なのだから、入ってくるお金の価値が上がるデフレは天の恵みである。

それに対して、一般の日本国民の生活は「将来不安」だらけである。金利が低いせいだけではないが年金の運用成績が不調だし、それ以前に人口構成の心配もあるので、年金が本当にもらえるか不安である。
 
民間の商品で運用しようにも金利水準が低すぎる。幸運な人々は老後に1億円の金融資産を持っているだろうが、それでも、0.1%で運用して年間10万円、1%で運用して100万円にしかならないことになる。夫婦二人で安心して暮らせる年間500万円を1%の金利で得るためには5億円が必要だ。

これでは、多くの人々が、将来不安を持ち、いくら目先の収入が増えても支出をせずにため込み、景気が浮揚しないのも当然といえる。

すでに、当サイト8月13日の記事「異次元緩和でも日本にインフレが起こらない極めてシンプルな事情」で、1989年のベルリンの壁、1991年のソ連崩壊以来世界中に広がっている「供給過剰ワールド」について論じている。

資金をやたらに供給してもインフレは起こらないし、景気を後押ししないのは明白だが、今回はさらに踏み込んで「金利をあげればインフレが起こる」という点を論じたい。