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急増中…もし「大型トラックのタイヤ」が猛スピードで飛んできたら

誰もが巻き込まれる可能性がある

トラックからタイヤが脱落すると、予測不可能な動きで転がり、周囲を襲う巨大な凶器と化す。実際、「明日は我が身」と思わせるような事故が多発しているのだ。いつ巻き込まれても、おかしくはない。

まさに『空飛ぶタイヤ』

午後6時30分を回った頃。愛知県蒲郡市内の国道23号線は、山間を通る片側一車線の窮屈な道路だ。

国道を隣町へ向かって西走していた神奈川県在住の50代男性Aさんを、突然の不幸が襲う。対向車線を走る大型トラックからタイヤが外れ、自家用車のフロントガラスに直撃したのだ。

走行中に外れた右後輪は、転がりながら対向車線に進入。直径約1m、重さ約100kgのタイヤはフロントガラスに激突後、車を乗り越えるように後方に飛んでいき、Aさんの車から2台後方を走る車にも接触した。Aさんは、頭部を打撲したものの軽傷で済んだ。

今年6月24日に起こった交通事故の話である。

「タイヤの当たりどころが悪かったら、運転者は亡くなっていたでしょう」(捜査関係者)

タイヤのナットが緩み、ボルトに負担がかかって折れたことが脱輪の原因だとみられている。

「Aさんの乗用車は大破し、走行不能に。ちょうど運転席の部分にタイヤがぶつかったため、被害者の救出にも時間がかかりました。

乗用車が中型のSUVタイプだったことが不幸中の幸いでした。軽自動車だったら、軽傷では済まなかったでしょう」(前出・捜査関係者)

なにせ、重さ100kgのゴムの塊が猛スピードで飛んできたのだ。Aさんは、まさに九死に一生を得たのである。

ゾッとするような事故だが、他人事ではない。実は、大型車のタイヤ脱落による事故は急増している。

国土交通省の調べによると、昨年度は67件。'11年には11件だったというから、6年で6倍超に増えている。しかも、脱落する8割強が「左後輪」だという。

タイヤの脱落といえば、'00年代前半に三菱自動車製の大型トラックの部品「ハブ」が相次いで壊れた問題が大きな社会現象となった。「三菱リコール隠し」だ。

この事件を基にした池井戸潤氏の小説『空飛ぶタイヤ』が、今年6月に映画化されたことも記憶に新しい。

 

作品でも描かれた、脱輪による凄惨極まる死亡事故は実際に起きた出来事がベースになっている。

'02年1月、神奈川県横浜市の県道を走っていた大型トレーラーの左前輪が脱輪。下り坂で勢いづいて約50m転がったタイヤ(重さ140kg)は、歩道を歩いていた20代女性に後ろから直撃し、押し潰された女性は命を落としてしまった。

'08年以降、死亡者は出ていないものの、毎年のように人身事故は起こっている。'16年には、岐阜県の中央自動車道で、走行中の大型トラックから外れたタイヤが後続トラックを直撃、運転手が意識不明の重体となった。運転手の意識は、2年が経った今も戻っていない。

なぜ、タイヤの脱落が起こるのか。そして、左後輪に偏る原因はなにか。自動車評論家の国沢光宏氏はこう分析する。

「ホイールナットの締め忘れと、整備不良が基本的な原因です。締め忘れをしないためには、日常点検しか対策はありません。

こういったミスが増えている原因として、輸送業界の人手不足も挙げられます。また、ハンドルを大きく切る左折時に、左後輪に大きな負担がかかるため、脱輪が増えるのでしょう」