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人類にとって一番「住み心地のよい星」は、今のところ火星だ

地球に近い金星ならばすぐに死ぬ

秒速100kmの突風と硫酸の雨

今年9月、スタートトゥデイの前澤友作氏が、2023年に月旅行へ挑戦すると宣言した。

米スペースX社のイーロン・マスク氏が計画する民間月旅行の第1号となり、人類の夢である宇宙移住へ時計の針を進める。

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水、そして生命体の存在が期待され、人類が住める可能性のある星として名前が挙がるのが火星だ。直径は地球の半分ほどだが、1日が24時間37分と近く、四季があることが類似している。

片道約7800万km、最低でも数ヵ月はかかるが、現実的な期間と手段で火星に行けることが、「火星移住可能説」の根拠だ。

ところが、火星よりもはるかに地球に近い、片道約4200万kmの距離に惑星がある。金星だ。

直径は地球の0・95倍、重さは0・82倍と、大きさが非常に近いため、両星は「双子星」と言われることもある。

では、金星の地表調査が進んでいてもいいのではないか? と思うかもしれないが、そうはいかない。結論から言えば、金星は生命体が住める環境ではないのだ。

 

まず、金星は二酸化炭素の厚い大気に覆われている。極めて強力な温室効果が働き、表面温度は常に400度を超えるほどである。

また、地表の気圧がとてつもなく高く、水深900mの深海で暮らすのとほぼ変わらない。そして、「スーパーローテーション」とよばれる、秒速100mの突風が常に吹き付けている。この時点で、人間の営みはどう考えても不可能なことがわかる。

おまけに、この大気のなかには硫酸の粒でできた雲が数十キロメートルの厚さで広がっているから、太陽の光をほぼさえぎってしまう。

微生物の繁殖や植物の光合成といった、有機物の原初的な活動は期待できない。

硫酸の雲があるということは、硫酸の雨が降るということだ。実際には金星の地表に到達する前に蒸発してしまうが、なんでも溶かす硫酸の雨を生身の人間が浴びれば、ひとたまりもなく死ぬ。

異常気象が叫ばれる昨今だが、地球はなんて住みよい星なのだろうか、金星にくらべれば。(嶋)

『週刊現代』2018年12月22日号より