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在日中国人が悩む「日本の学校ユルすぎ、子ども入れて大丈夫か」問題

有名私立か中華学校か、揺れ動く親たち
中島 恵 プロフィール

母国の厳しい競争を考えると……

彼ら(両親)が子どもを日本の進学校や有名大学に進学させたいと願うと同時に、日本の学校で大丈夫かと悩んでもいるのは、在日中国人同士のライバル心やメンツがある。そして、母国・中国での激しい受験戦争も関係している。

中国では幼いころから詰め込み教育が行われるのが普通だ。人口14億人の中で抜きん出るためには、人一倍努力しなければならない。中国では生まれた場所、戸籍などによって、努力だけでは一流大学に進学できないが、もし一流大学に進学できれば、二流大学、三流大学の人よりも高い給料を得ることができ、いい人生を送ることができる。

13 億人の競争を勝ち抜かなければならない〔PHOTO〕iStock

価値観が多様化し、いい大学に行くことだけがいい人生ではない、と考える人もいる日本とはだいぶ異なるのだ。

その母国の情報が今ではSNSなどで簡単に入手できるため、日本に住む中国人は「うちの子はこのままでいいのだろうか?」「中国に住む友だちの子どものほうが先に進んでいるんじゃない?」という“焦り”を感じてしまうのだ。だから余計に教育に熱が入る。

中華学校という選択

一方、もうひとつの選択肢が中華学校だ。中華学校とは海外に住む中国人のための学校のことを指す。日本には中国系、台湾系合わせて5つの中華学校がある。東京(四谷)、横浜2校、大阪、神戸だ。

中でも有名なのは横浜山手中華学校で、同校には小学部、中学部の合計で約600人の子どもが在籍している。95%が中国にルーツを持つ子どもたちだ。近年は在日中国人の増加に比例して入学志願者も増加し、小学部の倍率は約5倍という狭き門

横浜山手中華学校〔PHOTO〕著者提供

「わざわざ関西方面から受験にやってくる中国人もいるし、引っ越してくる人もいる。問い合わせは日本全国からある」(張岩松校長)というほど人気となっている。

同校の小学部では中国語による授業が全体の70%を占める。基本的に校内での会話は中国語なので、12歳までに中国語を自然と身に着けることができるのが大きなメリットだ。

中国人の先生も多く、日本の学校では習わない「中国文化」について、基本的な知識を得られるのも魅力だ。保護者の多くは30~40代で、冒頭の女性と同じように「日本の教育はゆるすぎるから(ぜひ、こちらで)」と心配しているケースが少なくない。

「母国語を習得させたい」という動機

中国語をきちんと習得させて、中学卒業後は中国の高校に子どもを送り出したいと思っている親もいて、「中国に提携校(高校)はないのですか?」という問い合わせもある(実際、要望が非常に多いため、2017年に中国の3校と提携し、進学できるようにした)。

中国人に限らないが、海外に住む人にとって、子どもの母国語問題は心配のタネだ。日本生活が長くなってくると、子どもは日本語がネイティブになるが、本来、母国語のはずだった中国語は“外国語”となる。

 

ずっと日本に住むつもりなら、子どもも日本語がネイティブのほうがむしろいいのかもしれないが、親自身もこの先、一生、日本で仕事を続けていくかどうかわからない場合、また、子どもの将来の可能性を考えたときに、「日本語しかできなくて、日本の大学を出て、日本で就職するというだけでいいのだろうか?」という不安にかられる。もちろん、中国人としてのアイデンティティにも関わってくる。