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妻と話し合って決めた「やっぱり手術で切るのはやめる」という決断

もしも家族が病気になったら…

夫婦の協力が結果に出る

ある日、突然妻が病気になってしまったら。考えたくはなくても、多くの夫婦が直面する現実である。都内在住の新井優子さん(51歳・仮名、以下同)は、5年ほど前に子宮筋腫と診断された。新井さんが話す。

「病気が発覚する約1年前から、生理の際に激痛で寝込むほどの症状になりました。

婦人科を受診したところ、子宮に大量の筋腫ができていることがわかったんです。すでに子どもは産んでいましたが、子宮を全摘することは避けたかった。

医師から開腹し、取れる筋腫だけ取り除く手術を提案されました。でも、それを夫に相談したら、手術を反対されたんです」

新井さんの夫は以前、自分が盲腸の手術をした際に傷口が化膿し、何年にもわたって痛みが続いたことを理由に挙げたという。新井さんは生理の時の激痛と貧血で、手術をすることに前向きだったが、あることをキッカケに考え直した。

「夫は私の病気についてすごく調べてくれていたのです。筋腫は薬で症状を抑えながら生活できること。

閉経すると、ホルモンが分泌されなくなり、筋腫が小さくなっていくことなどを指摘され、『薬でだましだましやりながら、小さくなるのを待とう』と言われました。

きちんと病気について調べてくれていたことが一番嬉しかった。その後、48歳で閉経して、それから症状が軽くなりました」(新井さん)

2年ほど前、埼玉県在住の坂田俊二さん(64歳)の妻・貴子さん(58歳)は、整形外科で「ドケルバン病」と診断された。

聞き慣れない名前だが、「狭窄性腱鞘炎」という、腱鞘炎の一種。スマホの使い過ぎも原因のひとつと言われ、「スマホ腱鞘炎」とも呼ばれる。女性ホルモンとも関係があり、更年期の女性に多く見られる病気だ。坂田さんが振り返る。

「妻は最初は左手首が痛み出し、次第に両手首に症状が出るようになりました。買い物袋を持つのも辛いほど、悪化していた。そこで、医師から痛みの出ている神経を束ねている腱の狭窄している隔壁を切開するという手術を勧められたのです」

当初、坂田さんは聞き慣れない病名に困惑し、貴子さんにどうアドバイスすればいいかわからなかったという。それで治るのであれば、手術もいいのではないかと単純に思っていた。坂田さんが続ける。

「よくよく聞いてみると、妻は手術後、手首の辺りにリストカットをしたような傷跡が残ることや、切った箇所に痛みが生じる後遺症の可能性があることを不安がっていました。

二人で話し合った結果、妻は手術はやめて、鍼治療に通うことにしました。手首だけでなく、肩や腕など広範囲に施術してもらった。

平日の買い物を減らし、私と一緒に休日にまとめて買い物に行くなど、少しでも負担が減るように努めました。幸い、2ヵ月ほどで症状が緩和し、いまではすっかりよくなりました」

がん研有明病院乳腺センター乳腺外科部長の上野貴之医師が解説する。

「妻が病気になった時、夫のほうが困惑してしまうというのは、よくある話です。妻は自分の病気だけでも大変なのに、夫の精神的なケアまでしなくてはならなくなる。

病気になった時は、治療法などわからないことを話せる相手が必要で、もちろん医師もいますが、家族の力が大きい。病気に一緒に向きあったうえで、奥さんの悩みを聞く姿勢と、時間を取ることが重要です」