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「医者から言われたけど…」薬をやめる選択で、得たもの失ったもの

ちょっとした工夫で減らせるものもある

「自信」を取り戻した

「糖尿病のために3年間ずっと医者から言われるままに薬を飲んでいましたが、このまま一生薬を飲み続けるのは嫌だったので、一念発起してダイエットに挑戦しました」

こう語る深野裕之さん(65歳・仮名、以下同)の表情は晴れやかだ。もともと身長168cmで85kgあった体重は、現在73kgとマイナス12kgの減量に成功。おかげで血糖値も下がり、薬をやめることができたという。

「薬を断つ代わりに生活習慣を変えました。調べたところ糖尿病を根本から治すには『睡眠』がとても重要だと知ったのです。睡眠不足が慢性化すると空腹時の血糖値が上がり、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の基礎分泌能力が低下するという。

そこで睡眠の質を上げるため、入浴の際、シャワーだけで済ませていたのを湯船にゆっくり浸かり、風呂上がりの軽いストレッチを始めました。寝室も間接照明にして、眠りにつきやすい環境を整えました。

並行して週末はジムに通い、大好きだった酒と煙草も控えました。最初は辛かったですが、代わりに『本当の健康』を手に入れることができたと思っています」(深野さん)

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痩せて見た目も若々しくなったことで「自信」を得たという深野さんだが、反対に薬をやめる選択によって、失ったものはあるのか。

「あえていえば、病院でのコミュニティですかね。以前は定期的に病院に行っていたので、顔見知りの『病院仲間』もできて、待ち時間に世間話をするのが楽しかった。それがなくなったのはちょっと寂しかったですね。

ただ、ジムで同じように糖尿病のためダイエットをしている男性と知り合い、新たな友人ができました。お互いに励まし合い、情報交換することで、頑張れた部分もあります」(深野さん)

 

生活習慣病の薬は「一度飲み始めるとやめることが難しい」と言われる。だが、それは大きな間違いだ。

東大通内科クリニック(新潟)院長で糖尿病の専門医である荒井康弘氏が解説する。

「生活習慣が悪く、内臓脂肪が多いため、インスリンの効きが悪くなっている方であれば、努力次第で断薬は十分可能です。もちろん生活習慣の改善が必要です。改善なしに薬をやめれば将来的な病気のリスクは高くなる。

糖尿病は一日20~30分運動するだけでかなり改善できます。最近はスクワットに注目が集まっていますが、他にも室内でできるフィットネスバイクなど、天候に左右されない運動を選んだ人が減薬に成功している印象があります」

それと同時に食事制限も重要になるが、無理な糖質制限は避けたほうがいいと荒井氏は指摘する。

「最近の糖尿病の研究では、食事の量より食べる時間が重要だとされています。夕食の時間をなるべく早めにするのがいい。糖質や脂質の代謝が活発な19時までに食べ終えるのがベストです。

薬をやめようとすれば、運動に時間を取られることになるし、今まで食べていたものが食べられなくなる喪失感を感じる人もいます。

ただ65歳を超えると健康寿命を延ばすという意識が強くなっていくので、我慢する辛さよりも、薬をやめられた達成感のほうが大きくなる方も多いですね」