Photo by iStock

老いた父・母の手術をやめた人たちの、いまの率直な思い

何がいちばん大切なことか…

「無治療」が増えている

千葉県在住の星野忠夫さん(57歳・仮名、以下同)の父、良治さん(83歳)に大腸がんが見つかったのは、'16年末のこと。

「父の便に血が混じったと母から聞き、地元の病院で大腸の内視鏡検査を受けさせたんです。そこで大腸がんだとわかり、ステージⅢと診断されました。

医者からは手術を勧められましたが、身体の負担があまりに大きいと思い、母と相談したうえで断ったんです。

父は内視鏡検査だけでもかなり辛そうだったので、これで全身麻酔をかけて手術を受けたら、術後に体調が回復しないのではないかと思ったからです」(星野さん)

 

80歳を超えるような高齢者で、がん手術を受けない人が増えている。

'15年に国立がん研究センターが行った調査では、大腸がんのステージⅣと診断された85歳以上の患者の場合、3人に1人(36.1%)が手術も抗がん剤治療もしない「無治療」を選んでいる。

さらに肺がん(58%)、胃がん(56%)では、2人に1人以上が無治療を選んでいる。

「後期高齢者のがん患者の場合、手術をしても寿命は延びません。特に前立腺がんや甲状腺がんが顕著ですが、進行が遅く、そこまで大きく発育しない。手術を受けるメリットよりも手術自体の負担が大きいのです」(医療ジャーナリスト・富家孝氏)

しかし、手術はいらないと決心した後も、「がんとともに生きる」日々は続いていく。前出の星野さんの父の良治さんは、通院しながら抗がん剤治療を受けるようになった。

「吐き気など、抗がん剤の副作用が辛いようです。以前は、地域の小学生の登校見守りボランティアなどにも参加していましたが、それも辞めてしまいました。

負担が大きいのが、千葉から都内の大学病院までの通院です。実家には車がないので、私が仕事を休んで車に乗せて連れて行くこともあります。

母は時々『あの時、スパッと切っちゃっていたらよかったのかね』と言います。手術を断ったこと自体は後悔していません。ただ、家族関係は少しギスギスするようになってしまいました」(星野さん)