「水道民営化」のあまりに雑な議論に覚える強い違和感

そもそもこれって「民営化」なの…?

「民営化」ではなく「官民連携」

12月6日に「水道法改正」が成立した。多くのメディアは、これを「水道民営化」と報道している(例えば https://www.fnn.jp/posts/00397400HDK)が、この言い方、ものの見方は正しいのだろうか。

答えを先に言えば、筆者は役人時代に本物の「民営化」を数多く手がけた経験があるが、これは本物の「民営化」(privatization)ではない。

「民営化」でないものを「民営化」と称して、「外資が乗っ取る危険がある」という批判はいつの世も出て来る。筆者は役人時代に郵政民営化など本物の「民営化」の企画立案をしてきたが、本物の「民営化」でも外資乗っ取りは避けることができる。このため、本物の「民営化」であっても、外資に乗っ取られた事例は、筆者の関する限りは一例もない。

というのは、民営化を進めると同時に、国際標準の「予防対策」もしていたからだ。例えば、郵政民営化の場合、郵貯が民営化により銀行法上の「銀行」になるが、銀行には次の三つの主要株主規制がある(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/2076)。

 

第一に株式を5%超保有する場合の「大量保有規制」。第二に、株式の20%超を保有する場合の「銀行主要株主規制」。第三に、株式の50%超を保有する場合の「支配株主規制」だ。これらの規制があるために、郵貯が銀行法上の銀行となっても(現に三菱東京UFJ銀行が外資に乗っ取られないのと同様に)、外資が乗っ取ることはできないだろう。

そもそも筆者からすると、今回の水道法改正法案を読んでも、どこが「民営化」なのかさっぱりわからない。この水道法改正は、従来の民有民営の定義による「民営化」ではなく、「官民連携」というものだからだ。

「官民連携」の場合、施設所有権はこれまでどおりに官が持つ。また、これはいまも行われている民間への業務委託の延長線の経営効率化で、本物の「民営化」にはほど遠いものだ。乗っ取ることができないことは、「企業オーナー」をイメージしてみれば分かるだろう。つまり、いくら経営権があっても、雇われ社長(民間)はオーナーには頭が上がらないからだ。

そうしたものを「民営化」と一言で片付け、ステレオタイプの批判をするのはミスリーディングである。メディアの中には「民営化」とさえ言っておけば、その報道に条件反射する人がいることを知っているのだろう。

そうした人は、データよりも個別事例のストーリーにしか興味をもたないので、メディアで取り上げられたものを、ろくに検証もせずに「反論の論拠」とする。

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