鬱も詐欺も左遷も経験した金髪銀行員だった僕はこうして「変わった」

人は変われる
1分で話せ』(SBIクリエイティブ)という本をご存じだろうか? 2018年3月に出版されるやたちまち重版がかかり、20万部超えのベストセラーになった一冊だ。著者は「Yahoo!アカデミア」というヤフーグループ内で“リーダー”を育てるための社内大学学長を務める伊藤羊一氏。日本興業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)を経て、文具メーカー・プラスの流通カンパニーでナンバー2を経験。この間、グロービス経営大学院に通い、請われてヤフーに転職した人物だ。
絵に描いたようなサクセスストーリーを歩んできたように見えるが、実は「まったく逆のダメ人間でした」(伊藤氏)。興銀時代に鬱を患い、手形詐欺にひっかかり、左遷を経験し、金髪銀行マンとして上司に煙たがられたという……。その伊藤氏はなぜ、国内ネット企業最大手のヤフーで、次代を担う人材育成に携わるようになったか? 『マネー現代』での連載開始を前に、まずは伊藤氏のワイルドすぎる転落&サクセスストーリーに迫る。
 

大切なことはみんな興銀に教わった

麻布高校から東京大学経済学部に進学して、日本興業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)に就職。文具メーカー・プラスで流通カンパニーのナンバー2を経て、Yahoo!アカデミア学長に就任し、2018年には『1分で話せ』(SBIクリエイティブ)が20万部超えのベストセラーに――。サクセスストーリーを地で行くように見えるのが伊藤羊一氏(51歳)だ。

今や、次代のヤフーを担うリーダーを育てるキーパーソン。伊藤氏の指導の元、力をつけ、職位をあげていった者は多数いる。

だが、本人曰く「もともとは典型的なダメ社員だった」。そもそも、興銀に就職した理由からして、「ダメ」だったと言う。

「テレビ局にでも行きたいなぁと考えて、大学4年の夏ぐらいから就職活動を始めて、比較的早い段階で内定をもらったんですよ。けど、同級生と情報交換をするなかで、『興銀というところがいいらしいぞ』と。東大だったからかもしれませんが、当時はいろんな会社から『面接に来てください』って連絡がくるわけですよ。だから、就職ランキングの上から順に電通、JR東日本、三井物産、東京海上みたいなところも受けていったんですけど、『興銀に受かったらひょっとして“エリート”なんじゃない?』などと思い始めたのが、興銀を志望したきっかけ。興銀で何かをしたい、という想いは一切ありませんでした。

そんなだから、今にして思えば面接もヒドイもんでした。『最後に何か言いたいことはありますか?』と聞かれて、“最近の発見”について話したんです。ウォークマンのイヤホンって、普通耳に入れるじゃないですか? でも、鼻の中に入れても普通に聞こえるんですよ! すごくないですか? って(苦笑)。

それと、『タバコを吸って吐き出すときに、煙が白い間は口笛がふけないんです。知ってました?』みたいな話もした……。そうしたら、『君、面白いね』と、面接を通過していったんです」

1990年に興銀入行。

しかし、伊藤氏はすぐさま挫折を味わう。面接時には口笛を吹くように叩いていた軽口も鳴りを潜めることになった。

「実は、中・高・大学と、人とコミュニケーションをとるのが苦手だったんです。サークルも入ってすぐにやめたりして、大学時代は先輩としゃべったこともほとんどなかった。

だから、仕事で困ったことがあっても、人に相談できない。どんどんため込んでいって、仕事がこなせなくなるんだけど、上司からは『少しは勉強しろ』とキツめに言われる。

半年間の研修を経て正式に配属先が決まるんですけど、研修の最終日には『4人の不合格者』が発表されたんです。『そんなバカな奴がいるのか?』と思っていたら、真っ先に呼ばれたのが僕だった(苦笑)。それ以降、ますます人としゃべれなくなって、新人時代はほとんど人としゃべらなかった……」