ライシテの木が植えられるのは、記念日に指定された12月9日の前後が多いが、別の時期にも植樹祭が行なわれている。
ライシテの木を考案したのは、全国教員労働組合で事務局長を務めたギー・ジョルジュという人物である。植樹祭を主催しているのは、各県の教育連盟やフリーメーソン系の団体などだ。
これらのライシテ推進団体が、しばしば市町村を巻き込む形で植樹祭を開催している。式典では、趣旨に賛同した市町村長が出席して挨拶することも多い。
全国で統一的に行なわれているわけではないので、開催の有無はその地域の土地柄や市町村長の政治的信条などに左右されていると推測される。
木が植えられる場所は、学校の敷地内、学校の周辺、その他だが、小さな子どもたちを植樹に参加させることが多いのが特徴である。
植えられた木は、時間の経過につれ、根を張り、幹を伸ばし、葉を広げる。それが子どもの成長と、ライシテ理念の世代間継承に重ね合わされるわけである。
ライシテはフランス共和国の憲法原理であり、この点はフランス人のあいだに大きなコンセンサスがある。
だが、「政教分離」と「信教の自由」の両立を目指すライシテの解釈は多様である。大きく言えば、公的空間から宗教を一切排除しようとする「厳格なライシテ」と、宗教の公共的役割をある程度認める「柔軟なライシテ」の二つの流れがある。
植樹祭を主催する団体は、「厳格なライシテ」を推進する潮流に属している。式典では「多様性」や「共生」が謳われるが、宗教の意義を認めようとする傾向は弱く、ライシテを価値としての押しつける向きがあり、党派性が強いものになっている。
そのこともあるのだろう。いくつかのライシテの木は、植えられたあと、何者かによって切られたり、引き抜かれたりしている。ムスリムを犯人に仕立てあげる風潮は抑制されているように見受けられる。犯人像として浮かびあがってくるのは、フリーメーソンに敵意を抱くカトリック伝統主義者であることが多いようだ。