2018年11月、オーストラリアのメルボルンにある王立小児病院で、結合双生児の分離手術が行われたとの報道があった。
分離手術を受けたのは、ブータン出身の1歳3ヶ月の双子女児ニマちゃんとダワちゃんで、お腹のところで向かい合わせに二人は結合し、肝臓を共有していたという。
オーストラリアの慈善団体が寄付を募って分離手術を受けさせたとのことだ。
手術は6時間に及んだが、12月初め現在では二人とも回復して元気にリハビリに励んでいるらしい。
日本でも、2001年に沖縄で生まれた長嶺姉妹(腹部で結合しており、生後2ヶ月で分離手術を受けて成功した)がメディアで報道されたことがある。
結合双生児という独特な身体の姿は私たちの想像力を刺激してやまない。
たとえば、萩尾望都の『半神』は、腰が横同士に結合した女性の双生児を主人公とした傑作短編であり、戯曲化・舞台化もされている。
また、人間だけではなく、双頭だったり身体の一部の結合した動物は古くから絵画や彫刻の題材とされ、ときには崇拝されたり恐れられたりしてきた。
だが、もちろん結合双生児はフィクションの中にだけの存在ではなく、ニマちゃんとダワちゃんのように現実に生きている存在である。
二人が分離手術の後でも元気だというのは良いニュースだ。
だが、実際には、結合双生児を是が非でも分離する手術にこだわるのは「単生者」の思い込みやお節介や偏見に過ぎないとの考え方が、現在の医療倫理では主流だ。
すぐ手術しなければ生命に危険の及ぶような障害などの特別な事情が無いかぎりは、自分たち自身でどういう生き方をするのが良いか判断できる年齢まで手術は待つべきだという。
なお、ここでいう単生者とは、結合双生者とは違って一人の人間で一つの身体の人たち(いわゆる「正常」)のことを意味している。