2018.12.08
長州力が愛娘の結婚式で見せた笑顔の裏にあるもの
失ったものを取り戻した瞬間だった「失ったものは、家族ですね」
本や映画には必ず〝終わり〟がある。しかし、「Fin」の文字が流れ、フィルムのカタカタとした音が消えた後も、主人公が生きている限り、その人生は続いていくものだ。
ぼくがプロレスラーの長州力さんを主人公として描いた『真説・長州力』という単行本を上梓したのは、2015年夏のことだった。
これまでの人生で何を得て、何を失ったかという質問に彼はこう答えた。
「得たものは、人を見る目。お前に俺の何が分かるって言われるかもしれないけど、なんとなく分かる」
一方、失ったものについては「ああ、家族ですね」と呟くように言った後、こう続けた。
「自分の子どもをよく知ることができなかった。みんな元気にやっているんですけれど、ずっと一緒にいて成長を見たかった。(そうした時間は)取り返せない」
この本が完成したとき、長州さんは長女の有里さんを除いて、家族と疎遠になっていた。その後、物語が動き、2017年5月に元妻の英子さんと再婚。三人の娘と仲良く過ごしている長州さんのことを文庫本の後書きで記した。
先日、その有里さんの結婚式が都内の結婚式場で行われた。

敷地内の教会で行われた式の後、披露宴までやや待ち時間があった。開始時間より少し前、スーツに身を包んだ体の大きな男が現れた。藤波辰爾さんだった。
受付に並んだ藤波さんを見つけた長州さんはさっと近づくと笑顔で腰の辺りを掌で叩いた。