画/おおさわゆう

病院の中で採血が一番上手いのは医者か看護師か…それとも?

覆面ドクターのないしょ話 第43回

健康診断や人間ドックでの血液検査。肘の内側辺りにぶすっと針を刺されて、血をちゅーっと抜かれる――注射嫌いじゃなくても、あまり気持ちのいい検査ではない。しかも、血管にうまく入らなくて、やり直しなんてされたら、ぶち切れたくなる。

この採血のとき、注射針は見ていても、誰が刺しているのかは、あまり気にしてないんじゃありませんか。次郎先生によれば、この「誰」によって相当上手い下手の差があるそうなんです。この記事を読んだ以降は、どんな人が採血を担当するかによって、覚悟を決めた方がよさそうです。

 

読者の皆様、いきなり質問です!

あなたは、今から血液検査を受けなければなりません。あなたなら、次のうち誰に採血されると安心ですか?

①医者
②看護師
③臨床検査技師

①と答えた方。医者に対するリスペクトが感じられます。きっとあなたはいい人です。

②と答えた方。模範解答です。

③と答えた方。あなた、かなりの事情通ですね。

採血といえば、私も研修医の頃を思い出す。不器用ではなかったはずだが、新米の頃は採血・点滴で毎日苦労した。

「佐々木とかいう研修医は来させないで!」
「変な医者が来て採血していった」

患者さんからはたくさんの苦情をいただいた。私のどこが「変な医者」だったのだろうか……心が折れたが、おかげでたいへん鍛えられた。

患者さんには申し訳ないが、失敗を重ねることで医療スタッフの採血の技術は向上するのである。

できれば、失敗を重ねるのは、他の人でやってほしい(photo by istock)

病院で採血を担当するのは、先ほどの質問項目にあげた3者、医者、看護師、臨床検査技師のいずれかである。

臨床検査技師という言葉に馴染みはないかもしれませんね。彼らは、検査を担当する技師です。

「検査を受けて来てください」

と言われて、検査室に入ると白衣を着た技師がいる。彼女たち(中には男性もいます)が臨床検査技師である。心電図・超音波・肺活量などを担当している。その他、血液・尿・細菌の検体を検査室で分析したりもする。

血液検査を受けるとき、採血するのは医者の場合もあれば、看護師の場合もある。大きい病院には「中央採血室」があり、そこでは臨床検査技師が採血している。

さて、この3者のうち、誰に採血をしてもらうと安心なのだろうか? 誰が一番上手いのだろうか?

読者の皆様、採血に失敗された経験はありますか?

「この間、失敗されちゃったのよ」
「針の先っぽでグリグリやられて……」

「失敗された」という言葉が私の胸にグリグリ胸に刺さる。

「失敗しやすい理由」

採血に失敗する原因はいくつかある。

① まず医者など採血する側が技術的に経験不足である場合

② 患者さんの血管が細くて曲がっている場合。注射の針が血管内に入りにくく固定しにくい。このため、翼状針という点滴用の針を使って採血することもある。

③ 血管が硬い場合も採血に失敗しやすい。特に高齢者では血管が硬く、たとえ太くても血管に針が刺さらず、蛇のようにニョロリと血管が動いてしまう。これを「血管が逃げる」という。一見、失敗しようのない感じの太い血管に逃げられ、採血に失敗すると、一日気分が落ち込む。

④ 肥満で血管が確認しにくい場合。肥満の方は厚い皮下脂肪により血管が見えにくく、指で触っても確認できないため、失敗しやすい。

私の同級生にドSの女医がいた。彼女は肥満の男性患者さんの採血の後、いつもプリプリ怒って医局に戻ってきた。

「だからデブは嫌いなのよ!」

採血は単なる技術であるから、基本手技以外はあまり理論がない。毎日採血をしていれば誰でも、もちろん読者の皆様でも上手になれる!

この「毎日」というのが重要で、私のように経験は豊富でも、最近採血業務から離れている医者は採血が上手くできるかどうかおぼつかない。

日本にまだ軍隊が存在した時代、各部隊には衛生兵という医療担当の兵隊さんがいた。彼らは医者・看護師ではない場合もあった。大工さんがなるケースもあったそうだ。奈良県のある宮大工の棟梁は戦時中、衛生兵として出征した。

「その辺の若い医者より俺のほうが採血はうまかった」

と、棟梁はその著書の中で語っていた。やはり、採血なんて毎日やれば誰でも上手くなれるのである。