育てられない子供を引き取るNPO法人が感じている「ある変化」

育てられない母親たち㉕
石井 光太 プロフィール

ダウン症の子供を養子に迎える夫婦

では、ダウン症の子供を養子に迎える夫婦はどういう人たちなのだろうか。

Babyぽけっとでは、不妊症の夫婦が会員となる際には、かならず「どんな子供であっても引き取る」という誓約書にサインを書いてもらう。

普通に子供を産む場合、すべての夫婦は妊娠する子供を選ぶことができない。これは赤ん坊をもらう養親も同じであるべきだ。障害があろうとなかろうと、親になるからにはどんな子供であっても受け入れる必要がある。そういう思いから説明会の際も、面会の際も、くり返し説明して理解を求めている。

それでも会員の中には、ダウン症と聞いて引き受けを断る人もいるそうだ(断った場合、会員を解除されることになる)。これまでも、障害のある子供を渡そうとして、「普通のクラスに入れない子は無理です」「実家の方からやめろと言われてしまいました」などといった理由で断られたことがある。

 

喜んで引き取る夫婦もいる。岡田は言う。

その夫婦は、ずっと不妊治療で大変な思いをしてきた人たちでした。最後は海外で代理母出産まで試みたんですが、子供を授かることができず、うちの会員になったんです。この夫婦にダウン症の子を引き取ってくれるよう電話をかけたところ、こんな答えが返ってきました。

『ありがとうございます。私たちはどんな赤ちゃんだって大歓迎です。私は病気の子さえ産めないんですから』

涙が出るほどうれしかったです。この子は絶対に幸せになると思いましたね

この親以外にも、「兄がダウン症だったので、うちは障害があっても気にしません」とか「親に話したら、おまえだって障害があるかもしれないって医者から言われて生れてきたんだぞって教えられました」と言って引き取った夫婦がいたという。

ダウン症だからという理由で子供を手放す親もいれば、喜んで引き受け、我が子として育てる親もいるのだ。

ただ、最近、Babyぽけっとでは、障害のある子の引き取りを制限しているという。ここ数年、障害のある子を特別養子縁組に出したいという依頼が増えすぎているためだ。

苦渋の決断だったが、障害のある子だけを引き取っていれば、都合のいいように解釈する親が増えてしまう――その点を危惧してのことだという。

岡田は言う。

養親のこともあるんです。ある夫婦はダウン症の子を特別養子に出しておきながら、新しく子供を産んで、そっちの子は育てていました。ダウン症の子からすれば、弟や妹は育ててもらえるのに、自分だけが捨てられたと思いますよね。ダウン症の子なら、それくらいはわかります。

本人からすればものすごくやりきれないし、がんばって育てている養親のプライドだってあります。そういうところを踏みにじるようなことはしたくないんです

実親の身勝手な行動によって、特別養子に出された子供や、引き取って育てている親が傷つくこともある。岡田は子供と養親の未来を思っているからこそ、そう決断したのだろう。

出生前診断によって異常がわかったからといって、すべての親が中絶手術をするわけでもなければ、育てることを選ぶわけでもない。産んだ後に手放す者もいる。手放された子供、その子を引き取った人々の思いにも、きちんと寄り添っていく必要があるだろう。

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