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育てられない子供を引き取るNPO法人が感じている「ある変化」

育てられない母親たち㉕

出生前診断を受けて…

日本で新型出生前診断がスタートしてから五年の間に、約5万8000人がこの診断を受けたとされている。妊娠中の母親の血液から、胎児のダウン症の可能性などを調べる検査だ。

新型出生前診断で胎児の病気がわかった場合、90パーセント以上の夫婦が人工中絶手術を受けることを選んでいる。

実際に出生前診断を受けて人工中絶を選択した高瀬晃子(仮名)は、次のように語った。

うちは夫婦共働きで、四十歳を越えての出産でした。出生前診断を受けるかどうかは悩みましたが、妊娠できる期間が残り少ないことと、定年まで二十年もないことを考えれば、お互いが納得できる形で出産するに越したことはないだろうと考えたんです

高瀬夫婦の場合、自分たちで育児ができる期間や経済的負担が限られていることを考慮して、出生前診断を受けることにしたのだ。そして診断の結果、障害のある可能性があると聞いて人工中絶を選んだ。

命の選別だという批判があることはわかっていますし、夫婦でも何度も何度も話し合いました。けど、育てられない子供を無責任に産んで、施設に預けたりする人もいるんですよね…。そんなことになるくらいなら、自分たちが育てられると納得できた子を育てた方がいいと思っています

 

彼女の場合は、人工中絶手術を受けた一年半後、新しい命を授かった。

これまで出生前診断は「命の選別」ではないかと、様々なところで議論がなされていた。それぞれ考え方はあるが、あまり目を向けられていないのは、出生前診断によって、「人工中絶を選ぶ親」「育てる親」の他に、「産んだ子供を捨てる親」がいるということだ。

今、特別養子縁組の現場では、そのようなケースが増えてきているという。中絶するわけでも、育てるわけでもなく特別養子に出されていくダウン症の子供たち。そんな現場で話を聞いてみることにした。

赤ちゃんの顔を見る前から特別養子に

茨城県土浦市に特別養子縁組の支援をするNPO「Babyぽけっと」がある。

ここは子供を育てることができない妊婦たちから相談を受け、出産までの一定期間寮に住まわせたり、サポートをしたりして、赤ん坊が生まれたら、不妊症の会員夫婦に引き渡して特別養子の手続きをする団体だ。

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妊婦たちが子供を手放す事情は様々だ。風俗店で働いていて客の子供を身ごもった女性、経済的な事情から子供を育てられない十代の女性、出産直前に彼氏に逃げられた未婚の女性……。

こうした妊婦たちにしてみれば、特別養子縁組制度を利用することで自分では育てられない子供を他の夫婦に託すことができる。一方、不妊症の夫婦にしてみれば、生まれたばかりの赤ん坊を引き取って一から実子同然に育てることができる。特別養子縁組制度は、虐待を防ぐ手段の一つとして、公的機関からも注目されてきた。

この特別養子縁組に出される赤ん坊に占めるダウン症の子の率が年々増えてきているという。Babyぽけっとの代表・岡田卓子は言う。

当団体を立ち上げた当初は、今ほど障害児の割合は高くありませんでした。けど、特別養子縁組を行う団体の認知が広がったことで少しずつ増えてくるようになり、最近では出生前診断で異常がわかったあとでうちに問い合わせをしてきて、『産んでも育てられないので、そっちで引き取ってくれないか』なんて言ってくる人も出てきました。赤ちゃんの顔を見る前から特別養子に出そうとするのです