「家族がいるから、老後も多分大丈夫」という思い込みの「落とし穴」

孤独死・老老介護に陥る人の深層心理
真鍋 厚 プロフィール

けれども、誰もがそのように自由に振る舞えるわけではない。現実的な処方箋の一つとしてよく示されるのが「多重所属(一つの集団に依存せず、複数の集団に同時に所属する)」であるが、当然ながら、人間関係を最小限にしたい人も少なくない。

もう一つの現実的な処方箋は、自分が望むコミュニケーション環境があるコミュニティへの移動と、個人向けの多様化したサービス(民間・自治体)の使い分けである。他人との積極的なコミュニケーションが不得意な人にとっては、現実的な落としどころになるかもしれない。

 

「迷惑をかけたくない」が生む孤独

「心の整理家」としてよろず相談を引き受ける「さえずりの会」の主宰者の山下みゆきさんは、訪問看護や心理カウンセラーなどの仕事の合間を縫って、ボランティアで高齢者などの見守りに取り組んでいる。

「さえずりの会」は、山下さんが父親の孤独死をきっかけに、自分でも何かできないかと思って立ち上げたボランティア組織だ。主として高齢者の自宅を訪問して、会話などを交えて安否確認をしている。特に地域から孤立している人には積極的に声掛けをしているという。

高齢者に話を聞くと、「子どもや孫に迷惑をかけたくない」という思いが先行して、孤独や孤立につながっている面があるそうだ。ただし、コミュニケーション自体を拒んでいるわけではない。個人ごとに多様な要因が絡んでいるという。

「女性の方は、私の『さえずりの会』の情報を見て、相談においでになります。不安や悩みなどを聞いているうちに、自然と見守りの話になることもあります。他方、男性はこちらから声を掛けないと引きこもってしまいますね」

国立社会保障・人口問題研究所の「生活と支え合いに関する調査」(*)によると、高齢期の会話頻度が低いほど、「長生きすることは良いことだと思う」割合が減ることが分かっている。

近年、山下さんのような取組みは、個人・団体を問わず増えてきている。これは決して高齢者だけの問題ではない。家族が外部の資源なしに回る時代は終わったことを自覚し、現在の「関係性に潜むリスク」と向き合う余裕を持たなければならない。

コミュニケーション環境のコントロールは、「サバイバリズム」(生存主義)の要だからだ。

今後、QOLと人間関係に対する社会的な関心は、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の「焦土化」とともに高まっていくだろう。

(*)国立社会保障・人口問題研究所が平成29(2017)年7月に実施した「生活と支え合いに関する調査」(旧:社会保障実態調査)の調査結果。 http://www.ipss.go.jp/ss-seikatsu/j/2017/seikatsu2017.asp