世界第4位の移民大国・日本で注目されない「もう一つの法改正」

「ひとを管理する」という発想
下地 ローレンス吉孝 プロフィール

近年の在留外国人にたいする施策

2008年のリーマンショック以降の不況下で、失業する外国人労働者やその子ども達の教育問題への対応を目的として「定住外国人施策推進室」が内閣府に設置された。

ここでは「教育対策」、「雇用対策」、「住宅対策」、「帰国支援」、「国内外における情報提供」の5本柱の対策が打ち出されている。

外国人施策の対象はすべての外国人から「日系(人)」へとすぐに変更され支援は絞られたものの、内閣府を中心として、言語、子育て・子どもの教育、雇用、福祉、共生に関する施策がたてられたことは一定の効果があったのではないだろうか。それ以降毎年、上記の項目で実施された対策内容が報告されていた。

 

この流れの中で、各省庁は以下のような対策を講じ、この会議にて成果を報告していた。

●文部科学省は、日本語教育推進会議、「生活者としての外国人」のための日本語教育事業、コーディネーターの研修や、日本語教育コンテンツ共有システムを公開。2016年度からは「公立学校における帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」や「定住外国人の子供の就学促事業」を開始した。

●外務省は、「日本で生活を始めることを予定している皆様へ」など生活手引き等を作成。

●厚生労働省では、社会保険・国民健康保険の加入推進を進めるとともに、雇用管理改善のため「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」を告示し事業指導を実施した。

●内閣府は定住外国人施策ポータルサイトを運営し、災害の情報や日本語教育に関する情報を公開。

しかし、これらの成果を報告していた内閣府の日系定住外国人施策推進会議のホームページが、今年7月24日付で突如として閉鎖された。

「アクセスされようとしたページは閉鎖しました」とある

ページ閉鎖の理由として挙げられているのは、同日に閣議決定された『外国人の受入れ環境の整備に関する業務の基本方針について』(いわゆる「骨太方針2018」)とされている。

ここでは、「法務省が、外国人の受入れ環境の整備に関する企画及び立案並びに総合調整を行うこと」とされている。

骨太方針には内閣府の当該会議に関する方針は一切記されていないが、このページの閉鎖や方針に記載された文言をみるかぎり、これまで定住推進会議を主催していた内閣府の役割が、法務省への移行されていることがうかがえる。

この流れのなかで、定住推進会議のホームページは閉鎖され、会議そのものがどうなったのかは現時点では明らかにされていない。改正案が可決される前に、すでに水面下での変化の動きは進んでいたのである。

今回の改正案では、これまで法務省の内部部局であった「入国管理局」が、外局の「出入国管理庁」へと格上げされている。

出典:法務省資料「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案の骨子について」

法務省の外局には、ほかに「公安審査委員会」と「公安調査庁」が設置されている。

外国籍住民に対する各省庁の役割のなかで、これまで法務省は「入口」である入国管理の役割を担ってきた。しかし、この新法案による格上げにより、「入口」の「管理」みならず、「外国人の在留」そのものの「管理」を担うことが掲げられたのである。

ここで一度立ち止まって思い返してみたい。日本政府はこれまで、必ずしも外国人を「労働者」として単純に捉えてきたわけではないし、地域で暮らす外国人を「管理」するという表現もこれまで使われてこなかったのである。

例えば2006年3月27日には総務省において「地域における多文化共生推進プラン」が策定されている。また、同年には内閣官房において外国人労働者問題関係省庁連絡会議が発足され、「『生活者としての外国人』に関する総合的対応策」が策定された。

それまで「労働者としての外国人」という側面が強調されがちだったことへの反省として、ここでは「生活者としての外国人」という意味づけが前面に打ち出され、「地域での共生」が構想されていたのである。

しかしここから約12年たったいま、推し進められている法案では、「生活者としての外国人」という観点も、「共生」という観点も全くと言っていいほど消えてしまった。

これまで政府が積み重ねてきた議論に逆行するような展開を見せている。そこで示されているのはあくまでも「外国人の在留の管理」なのである。これは「ひとの管理」という発想なのだ。

法務省のなかで「外国人の在留の管理」がその任務とされる流れは、これまで日本で暮らしていたすべての外国籍住民を「管理する」という発想が強く打ち出されている。

これまで多くの外国人と暮らしてきた地域の人々も政府の動きに危機感を抱いている。

外国人住民が多い県市町でつくる「外国人集住都市会議」の座長都市・群馬県太田市の清水聖義市長らは28日に法務省を訪れ、外国人施策を総合的に担う組織の設置などを求めたという。この意見書でも「中長期的な共生施策がなければ地域社会に大きな混乱を招く」と指摘されている。監視・管理ではなく、共に暮らす市民として受け入れる姿勢が問われている(毎日新聞「入管法改正案:『中長期策ないと混乱』外国人集住都市会議」)。