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世界第4位の移民大国・日本で注目されない「もう一つの法改正」

「ひとを管理する」という発想

入管法「技能実習」が注目されるが…

すでに秒読みの段階に入ってきた――。

臨時国会では連日、入管法の改正案をめぐる論戦が続いている。会期は12月10日までであるが、与党は12月7日、すなわち本日中にも参議院本会議での法案の可決、そして成立を目指している。

重要な法案であるにもかかわらず、衆議院で審議にかけた時間は17時間15分と圧倒的に短く(朝日新聞「審議17時間のみ『白紙委任だ』入管法案、衆院を通過」)、メディアでは「採決強行」という見出しが見られる。

また、受け入れの上限や、受け入れの具体的な対応策が示されておらず、重要な部分は「省令」や「分野別運用方針」で定めるとして決まっていない。省庁の裁量が強く働く要素が残されたままの通過となった。国と社会全体のあり方にかかわる重要な法案だが、あまりにも性急であると言わざるを得ない。

法務省の和田雅樹入国管理局長は、「特定技能」という新しい資格での受入れ見込み人数のうち「技能実習」から移行する人の割合は約55~59%になるとし(毎日新聞「衆院法務委:初年度、半数は実習生 入管法案審議入り」)、すでに日本に滞在している技能実習生の滞在延長に主眼を置いた制度改正といえる。

法務省が公開した技能実習生の実態調査結果や、様々なメディア・支援者・研究者がこれまで十数年にわたって指摘し続けてきたとおり、技能実習制度は深刻な人権侵害の温床となっており、制度の抜本的な改善がすぐさま必要な状態である(毎日新聞「外国人実習生、3年で69人死亡 6人は自殺 法務省資料で判明」)。

合法的な滞在の延長を模索した新制度は、これまでの現状を見直さないばかりか、技能実習制度が抱えてきた種々の問題をさらに拡大しうることが容易に予測される。

このように新制度そのものについて、あまりにも未整備なまま議論がすすみ、多岐にわたる問題が野放しにされているため、どうしても外国人の新たな流入という「入り口」の側面に注目があつまっている。

しかし、今国会で改正が審議されている法案は「入り口」にかかわる入管法のみではない。国会に提出された改正案のタイトルを今一度見てみたい(法律案はこちらを参照)。

【出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案】

これに意味の区切りで仮に句読点を打てば、

出入国管理及び難民認定法、及び法務省設置法の一部を改正する法律案】

となる。

すなわち、今回の法律案が改正の対象としているのは「出入国管理及び難民認定法」と「法務省設置法」の二つである。

「出入国管理及び難民認定法」では新しい在留資格として「特定技能」が置かれるが、「法務省設置法」の改正で挙がっているのは「出入国在留管理庁」の設置である。

 

もう一つの法改正

「法務省設置法」改正は「出入国管理及び難民認定法」改正の影に隠れてメディアでもあまり焦点が当たっていない。

ここではどのような改正が意図されているのだろうか。法律案を見てみると、以下のような内容が示されている。

①法務省の任務を従来の「出入国の公正な管理」から「出入国及び外国人の在留の公正な管理」とし、これまでのような入国管理のみならず「外国人の在留の管理」をも対象としている。(改正案 第二、一条)

②それまで法務省の内部部局であった「入国管理局」を、外局で新たに「出入国在留管理庁」として設置する。(改正案 第二、二条)

現在、メディアなどでも「特定技能」に大きな注目が集まっているが、水面下で同時進行している「法務省設置法」の変化も非常に重大だと考えられる。

「出入国管理及び難民認定法」の今回の改正は在留資格ベースで考えると「技能実習」と新たな「特定技能」にかかわる改正である。

しかし、法務省のあらたな任務として追加された「外国人の在留の管理」で対象となるのは、上記の二つの在留資格だけではない。

現在の、外交、芸術、教授、高度専門職、医療、研究、文化活動、留学、家族滞在、特定活動、永住者、定住者、日本人の配偶者など、すべての在留資格の「外国人の管理」に関わる改正なのである。

これまで「入国」に結び付けられていた「管理」という言葉が、「外国人の在留」へもスライドされて結び付けられている。

現在日本で暮らしている外国人の在留のすべてにかかわりうる法案が、加熱する入管法改正議論のどさくさに紛れて静かに改正されようとしている。