積水ハウス「地面師事件」と会長解任クーデターの深層

騙し取られた55億円はどこへ消えたか

愛人のいるフィリピンへ

第一陣検挙の三日前にあたる10月13日1時15分、NHKをはじめとしたマスコミ環視のなか、小山は羽田空港からフィリピン航空ファーストクラスに乗り、悠々と高飛びした。事情通によれば、その経緯は以下の通りだという。

「何度も取り調べを受け、捜査が迫っているのを知った小山は当初、仲間の三木と関釜フェリーに乗って下関から韓国の釜山に渡ろうとした。航空便より船便のほうが港の監視態勢が緩いと考えたからです。

しかし三木に誘いを断られたあげく、早朝の船便に間に合わず、いったんは韓国行きを断念した。

 

ところが、いよいよ捜査の手が近づくと、愛人のいるフィリピンに向かうことを思い立ったのです。はじめ成田空港からJAL便に乗ろうとしたところ、日本の航空会社は警察に通報する危険性が高いと思い直し、羽田から出ているフィリピン航空に切り替えたと聞いています」

関釜フェリーの件はマスコミにも漏れていなかったようだが、そのあとの足取りはしっかり新聞やテレビ、週刊誌の記者にとらえられ、報じられている。警視庁にとっては大失態であるが、新聞やテレビがさほど問題にしないのは、捜査当局から睨まれ、警察情報からシャットアウトされるのを恐れるからだろう。

記者がそこまでつかんでいるのに、なぜ警視庁は肝心の主犯を取り逃がしてしまったのか。

「そのせいで、いまや犯行グループに内通している警視庁OBがいるのではないか、とも囁かれています」(事情通)

むろん小山は国際指名手配された。しかし、事件の奥行きはもっと深い。これまで書いてきたように、積水ハウス事件を企画・立案したのは、小山ではなく、内田マイクであり、北田文明である。たとえば第一陣の逮捕組である永田は内田の連絡役であり、55億5000万円を振り分けるための銀行口座を用意して9人目の逮捕者となった佐々木は、北田の指示を仰いできた。

それぞれ、内田グループ、北田グループとして、他の地面師事件でも名前が挙がってきた。さらに積水ハウスの預金小切手を現金化する役割を担った土井淑雄(63)という存在も明らかになっている。私が北田と遭遇した時に取材をしていた、あの地面師である。土井は事件のなかで金融チームを結成し、現金を振り分ける役割を担ってきたとされる。

入院していた地主の海老澤佐妃子は、この決済直後の6月24日に病院で息を引き取
った。地面師たちはそこを狙いすましたかのようでもある。

なかでも内田と北田という二人の大物地面師は積水ハウス事件を計画立案した。そして警視庁は11月20日、14人目の積水事件犯として内田を逮捕した。文字どおり神出鬼没の詐欺集団を率いてきた大物二人を手中に収めた。

だが、積水ハウス経営トップの〝クーデター騒動〟にまで発展した事件で騙しとられた55億5000万円は、闇の住人たちの手で分配され、すでに溶けてなくなったとみたほうがいい。

地面師事件のすべての記録がここにある