積水ハウス「地面師事件」と会長解任クーデターの深層

騙し取られた55億円はどこへ消えたか

「2017年度内の3月中には、地面師グループをいっせい摘発できるのではないか」

取材してきた記者のあいだでは早くもそう囁かれた。17年8月以来、ずっと燻ってきた事件摘発の期待が高まったが、警視庁の捜査はそこからずれ込んでいく。

「8月末の新捜査二課長への交代を待って、9月はじめの捜査着手ではないか」
「すでに事件は警視総監マターなので、三浦正充さんが総監に着任する九月半ばかな」

そんなさまざまな検挙情報が駆け巡ってきた末、ついに10月16日、海喜館を舞台に暗躍した地面師グループ8人の逮捕にこぎ着けたのである。

これだけの一斉検挙となると、一つの警察署には収容できない。身柄の拘束先は、当人の住居や留置所の空き状況によって異なった。逮捕第一陣となった8人の氏名と逮捕時の年齢、留置した警察署を改めて挙げると、生田剛(46)が渋谷署、近藤久美(35)が原宿署、佐藤隆(67)が赤坂署、永田浩資(54)が目白署、小林護(54)が代々木署、秋葉紘子(74)が原宿署、羽毛田正美(63)が東京湾岸署、常世田吉弘(67)が戸塚署だ。

事件におけるそれぞれの役割を記すと、IKUTAホールディングスの生田と近藤が積水ハウスとの取引窓口で、佐藤は小山とともに行動してきた首謀者の手下、小林は運転手役だ。指定暴力団住吉会の重鎮だった小林楠扶の息子であり、そのことも一部で話題になった。

また秋葉は犯行における重要な役回りをした。持ち主のなりすまし役を引き込む手配師である。その秋葉から旅館の持ち主、海老澤佐妃子のなりすまし役に任命されたのが羽毛田で、彼女の内縁の夫役が常世田だ。

警視庁は逮捕予定者を15人前後と定め、捜査に着手した。この第一陣の8人が逮捕された四日後の20日、逃げていた佐々木利勝(59)を逮捕し、三田署に留置した。佐々木は地主のニセ振込口座づくりを担い、9人目の逮捕者となる。

27日には連絡係の岡本吉弘(42)が出頭し、29日、11人目の逮捕者となったのがあの北田文明だった。その後の三木勝博(63)、武井美幸(57)と合わせると、警視庁はここまでで13人に縄を打ったことになる。

だがその実、あろうことか、警視庁は肝心の主犯格の一人であるカミンスカスこと旧姓・小山操(58)を取り逃がしている。